短編

□以心伝心
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大学を出たら雪がふっていた

季節は2月。
一番寒い時期を迎えて寒いのがあまり好きではない俺は眉をハの字にして困った顔をした

傘なんて持ってきてねぇよ…



いつの間に一緒だったのか悪友の櫻井がさみーよ元春くぅーんと俺にベタベタ近寄ってきた



「あー!近い!離れろ!!」


「いってぇって!
そんなんじゃいざってときなんにもできねーぞ?」


「大きなお世話だっつーの!」



いいところつくこの言葉のトゲ。

年下の想いのひとになんにも出来てないのは事実。
こんなに好きなのに告白どころか手も繋げない

なっさけないチキン男な自分があきれる


櫻井が名前の話をするもんだから会いたくなった

今日はバイトお互いないしバイト先にいるとは思えない




「(学校通って帰ってみるか…)」




もし奇跡的に会えたなら、偶然を装って乗せて暖かい飲み物かご飯でも行こうと決めて少し心を弾ませた


いつの間にか離れていた櫻井がなぁ?と俺に声をかける




「なんだよ」


「なんか入り口騒がしくねぇ?」




そういえばさっきから変に騒がしい

ニヤニヤしながら通る通行人の目がやたら痛い


俺と同じ講義をとってる友達がその子に声をかけていた

誰だ…、あれ…。



よく見たら見慣れた制服で赤のマフラー。

愛しのピンク色のふわふわ髪の毛。


思わず目を見開いて櫻井を置いて走り出した




「…名前!!!」


「あっ!真咲先輩!」



俺をみるなりぱぁっと顔が明るくなった気がして思わず口元が緩んだ



「なんだ、真咲待ってたの」


「わりぃな、
ってか大学でナンパするなよ」


「まあいいじゃねえか!
じゃあな真咲ーー」




適当に流すと鼻を真っ赤にして「本当に会えるなんておもわなかった」なんてかわいいこと言うもんだから彼女でもないのに抱き締めそうになった

あぶねぇあぶねぇ
しっかりしろ真咲元春



――――って え?



「…俺のこと待ってたのか?
こんなに寒いのに?」


「はいっ!
なんか急にあいたくなって…」


「頼むから無茶すんな…
鼻真っ赤じゃねーか…」




人差し指と親指で名前の鼻を摘まむとわっと声をあげた

嘘だよ、めっちゃ嬉しい

でも、男として年上としてこんな顔みせたくて少しいじわるしたら彼女はやめてくださいよーと笑った


そんな彼女が愛しくて、嬉しくて
幸せを肌で感じた




「名前ちゃん…だよね?
こんにちわ、櫻井です」


「あっ、櫻井さん!こんにちわ!」




いきなり肩から顔をだしたもんだから俺は驚いて手を離してしまった

そういえばさっきまでいたな櫻井




「いやー、まさか真咲のニヤニヤ顔をこんなにはやく拝めるとは…」



櫻井が俺をみてニヤニヤしてる
なんだこいつの悪そうな顔


「真咲に送ってもらおうとしたけど名前ちゃんがいるならしょうがない。
大人しく帰るよまたな、真咲」



気を使ったのかさっさと去ろうとした櫻井になぜか申し訳なくなってしまった

なにを声かけようか悩んでいると彼女がさきに声をかける



「あのっ、櫻井さん、よかったらこれ…」




差し出したのはさっきまで彼女が差してたかわいい傘。


櫻井が傘と彼女を見比べると彼女は顔をしかめながら笑った



「濡れちゃうから…、
こんなのでよければ…」



「ありがとう」



笑顔で受け取って今度こそじゃあなと手を降った

さて。と彼女に手招きをして有料駐車場まで歩いた
横から感じる彼女の存在。

思わず彼女を見たくなって、隣をばれないように見たら彼女は気づいて笑った
顔が暑くなって顔をそらす

…その顔はずるいって

近くの有料駐車場につくと「先に乗ってろ」と鍵を渡す。

金をいれて車に乗り込んだ



「さみーー…」

「寒いですねー…」


「なんで連絡しなかったんだ?
ってかいつから待ってた」


「…連絡したら、驚いたかお、見れないじゃないですか
真咲先輩になんか急に会いたくなっちゃって気づいたら大学へ…

でも、そんなに待ってないです!」



えへへ、と苦笑いを浮かべる彼女が愛しい

これぐらいはいいよな
と彼女の手を握ると彼女え?と俺を見た



「うーわっ、やっぱりつめてぇ!

ったく…、握られてろ、俺のが多少暖かい

暖房、効くまで我慢しろなー」



頼むからゆっくりきいてくれよ、俺の愛車と微かな願いを込めて

そういったら彼女は握り返してくれた



「ゆっくり、暖かくなればいいですね、車…」



その言葉に驚いて横を見ると彼女は顔も耳も真っ赤にして俺とは反対側をみていた

どんな顔してるだ、まったく、
かわいいこといってくれちゃってよ



「んじゃ、今日はずっと握ってような

名前、どこいきたい」


「んー…駅前に新しくできたカフェ!」


「おぉ、いいじゃねぇか
行くぞ、ベルトしろー」




素直に言うこと聞いたことを確認する

いい子だ、と額に触れるか触れないかぐらいのキスをすると行くかーと車を走りだした




「…真咲先輩」


「なんだ?」


「耳真っ赤ですよ」


「…うるせぇ
お前も真っ赤だろ」








           以心伝心
         ((  寒い冬だからこそ、  ))
 

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