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□オレンジ・ピト―の深層心理
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深い深い意識の中埋もれてた
気付いてはいけない深い想いに
気付いてしまったのです。


オレンジ・ピトーの深層心理


定期考査明けは成績処理やら何やらで堪らなく忙しくなる。
トイフェル・ディアボロスは自分の机に置かれた山積みの書類を直視出来ずにいた。
―何だ、この量は。尋常じゃない。
自分の受け持つ生徒たちの答案が含まれているにしても、この量は絶対に可笑しいだろう。目分量でさえだいたい通常の3,5倍は確実にありそうだ。
思えば今朝、ルキ校長が『今までたんまり溜めに溜め込んだ仕事も積んでおいたからね☆』と鼻歌を歌いながら巫山戯たこと(トイフェルにとって)を抜かしていた。
しかし、まさかこれ程までとは。
これを明日までに仕上げろと。
いや、無理だ。サボろう。サボるしかない。増えた仕事なんて元々増えている様なものだ。今日サボろうが明日サボろうが、仕事の山がどんどん増えていくのは同じこと。例え今日一日精一杯取り組んだとしても、積み重なった書類は決して崩れないだろう。
ならば今日の分を明日に回して、せめて一日くらいは楽をしても罰は当たらないのではないか。
そう独り滅茶苦茶な解釈をしたトイフェルは足取り軽やか且つ誰にも見つからないようにいつもの場所へと歩を進めた。しかし頭ではその様に思っていても、結局次の日にはまた同じ様にして彼の仕事の山は積み重なっていることをトイフェル自身は分かっているし反省も少しはしている。
だがだからと言って彼自身はそれをそんなに気に留めている訳でもないので『主任、主任がいません!学年主任ーー!畜生またかぁ!』という背後から聞こえる騒がしい声にびくりと肩を
震わせながら足早に去ったのであった。


いつもの場所とは当時―トイフェルが赴任したての頃―見つけた絶好のお昼寝スポットである。本校舎の裏側にある旧体育館の倉庫で、古びた鍵は子供でさえも力を込めれば簡単に開いてしまう程管理の甘さが目立っていた。そのおかげでトイフェルは難なく忍び込めたし、幽霊が出るという噂から教師も生徒も近寄ろうとしない。
そんなあまりに良い条件が揃っているので気付けば教員生活が始まって以来二十年間ずっと、此処に通い続けていた。
もはや幽霊だと噂されているのはトイフェル自身だと言われても不思議ではない。

「お昼寝でゅふふターイム」
トイフェルは気分良く倉庫の扉を開け放った。
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