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□オレンジ・ピト―の深層心理
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ガラガラという扉が開く大袈裟な音と伴に、何処からか剥がれた錆も落ちてくる。
視覚は暗闇に奪われていた。
旧体育館全体が電気が通っていないため真っ暗であるので倉庫の中の様子も暗闇に包まれ何も伺えないないからである。
ただ高い位置にあるほんの小さな窓の隙間から入る僅な光がコンクリートの壁に奇妙な模様を作るのだけが明らかだった。
―ここは相変わらず良い気味の悪さをしている。
トイフェルはそう思いながら倉庫の右手にあるスイッチを押した。途端に暗闇だったその空間は蛍光灯の人工的で落ち着いた明かりに満ちる。
体育館には電気が通っていないのに何故倉庫には通っているのか。それはトイフェルが普段発揮することの無いやる気気を以て、なんとか素人の手でも回線を繋げたからである。
彼はサボる為にならどんな努力もデメリットも惜しまない男なのだ。
その証拠に倉庫は割りと綺麗に整頓されていて、簡易的な冷蔵庫が備え付けられていたり、暇を潰すゲームまであったりする。
中央には布団も敷かれていて完全に寛ぐ為の空間として私物化されていた。

とりあえずトイフェルは凝りに凝った肩にシップを貼ろうと、冷蔵庫の側まで歩んだとき何か違和感を覚えた。
違和感の正体はすぐに発覚した。

自分の持ち込んだ布団が盛り上がっていたのだ。
その固まりは上下に動いていた。まるで人が呼吸をするかのように。
おまけにその端からは茶色い毛がぴょこんとはみ出していてそこに何者かの存在があることは明らかだった。

―‥誰かいる。
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