ポケットモンスターAW

□第七章
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第七章 「もう一人のランダ」


〜ラピスラズリ本部〜

シアン「全員いますね?」

ラブル「幹部4人、補佐一人 計五名、全て揃いました。」

シアン「では、作戦会議を始めましょう…。 まず、僕達の切り札を復活させるには 天之巫女一族の末裔… ルミナの力が必要なことが分かりました。」

コバルト「ルミナ… デンデンを持ってる少女か…! 偶然にしては出来すぎているな」

トランス「おそらく、あの裏切り者は知っていて託したんだろ。
アレについて話したのは迂闊だったな…」

インディゴ「ちぃっ トウヤの野郎… ざけやがって!」

28「フジャケルナ‼︎」

ラブル「あんたら2人!うっさいわよ!」

インディゴ/28「ういっす…」

シアン「トウヤに謀られたのは確かに痛かったですね…。彼の先手は敵ながら見事です。
それから… ランダ というトレーナーがかなり厄介ですね」

28「ダレダ、ソレ?」

ラブル「あのトレーナーが…ですか?」

シアン「彼は僕と同じ力を使えることが分かったんです。たぶん、貴方達でも敵わない」

インディゴ「あの獄炎は…ただもんじゃなかったしな…」

28「ハブラレマシタゾwwwww」

コバルト「そうなると、シアン 直々に?」

シアン「いや、確実な手を使いたいのです。全員で、ランダ ルミナを叩きます。
今動かなければ、今後支障を来たすでしょうから。」

コバルト「全員で…?」

ラブル「あの… それはいくらでもやりすぎでは…」

インディゴ「それに、あの2人別行動ですよ」

シアン「これは僕の推理ですが…。レシラムをランダはボールからではなく、呼び出していました。しかし、口笛などの動作を一切していませんでした。」

28「ン?」

シアン「つまり、彼はレシラムと意思疎通できた…。」

コバルト「ですが、それがランダとルミナが一緒にいるどんな理由になるのでしょうか?」

シアン「だとすると、ルミナのポケモンと意思疎通を計れば、連絡無しで場所特定ができるわけです。
ランダはルミナを守ると言ってましたからね… 間違いなく、ルミナの元に来るはずだ と。」

28「 名 推 理 」

トランス「流石はシアン…。」

シアン「どうでしょう?この作戦。二人とは言えども、他にも仲間がいる可能性も十二分にありますし、何よりミスは許されません。これが一番だと思うのです」

インディゴ「もともと我等は忠誠を誓った身」

ラブル「どこまでも着いて行きますよ」

28「いい台詞だ。感動的だな。だが 嫌いじゃないわ!」

ラブル「28うっさい」

28「サーセン...」

シアン「では、決定で良いですね」

皆が頷く中、コバルトだけが頭を縦に振らない。

コバルト「どうやって場所を特定するのですか?
ルミナもランダも分からないですよ。イッシュ地方 とはいっても広い」

シアン「手は打ってあります」

インディゴ「GPSをレシラムに付けてあるんだぜ」

シアン「付けれる隙があったのはラッキーでした。」

コバルト「…すまん。シアンにミスがあるはずないよな」

シアン「疑うのは悪いことではないですし、コバルトのその注意深さはラピスラズリとして必要不可欠なもの。気にしないでください。
明日には出発します。全員、フルでいきますよ」

一同「了解!」

それぞれが準備をする間、シアンは一人で考えごとをしていた。

シアン「AILE… いったい 何を境にして そのキセキは人を トレーナーを選ぶのでしょうか…。」

そんな事を呟きながら、これからの流れを確認し始めた。
ラピスラズリにミスは許されない。改革とはそういうものだ。

シアン「これで… 仕留めますよ、 ランダ そして ルミナ…」

その姿を見ながらニヤリと笑う者の姿が一人いたことを… シアンは全く気付いていなかった。



ランダはといえば、ラピスラズリに狙われていることなど分かるはずもなく、レシラムとお喋りしながら南下していた。

レシラム‘‘さすがに距離が長いからな。全速力で飛べるのは良いことだ”

ランダ‘‘ルバチュスさんに感謝だね”

ランダは神託の村での会話を思い出す。



(ルミナ宅にて)

ランダ「アクロマ…さん…? 」

マクシュ「あぁ。お前の秘めたる力について、喜んで話すよ、間違いなく。俺は事情があって喋れないからな…。それに、アクロマの方が詳しいだろうし」

フラシ「聞いたことが私もある。ポケモンとトレーナーの絆について研究しているんじゃなかったかなぁ」

ルバチュス「そうですね。僕達理系からすると憧れの存在…!」

散歩に出ていたルバチュスだったが、マクシュに捕まえられ ルミナ宅にお邪魔していた。

ランダ「でも…。」

レイカ「ルミナのことが心配なんでしょ?大丈夫よ、ルミナだもの」

ランダ「た、確かにルミナは強いですけど… 相手はラピスラズリなんですよ。安心なんか…」

レイカ「私たちだってしてないわ」

ランダ「えっ?」

フラシ「安心なんかできない。いつだって娘は心配さ…。でも、今は信じるしかない」

マクシュ「ランダ、ルミナのことは安心しろ。一番の助っ人と遭遇してるだろうから」

ランダ「本当ですか、マクシュさん!?」

マクシュ「あぁ。だから、思い切ってアクロマんとこに行ってこい。
場所は P2ラボ 辺りだ。」

ランダ「俺……… 行きます!シアンには今のままじゃ絶対勝てない。だったら 少しでも強さに近づいてみせるまで!」

ルバチュス「そんなランダにプレゼント」

そう言って渡されたのは何かの服装一式だ。

ランダ「え、これは?」

ルバチュス「前にチャンピオンロードで拾った、古代の耐熱耐G完備の特殊スーツだよ。たぶん、ゴルーグを乗り回してる人が使っていたんだろう」

ランダ「古代の…なんだ」

ルバチュス「性能は僕が保証しよう。あ、 付属のヘルメットも はい」

フラシ「古代の科学の力ってすごいな」

マクシュ「ゴルーグ用ともなれば安心。これでレシラムも速度が出せるな。」

ランダ「あ、ありがとうございます…」

ルバチュス「僕達はちょっと野暮用が出来てしまったからね…
ここでお別れだ。」

マクシュ「ランダ、頑張れよ。」

ランダ「はい!」


そんなこんなでランダは今、古代のスーツを着てレシラムの上にいる。
なかなかセンスが良い装飾で、カッコいい(小並感)

ランダ「このスーツ ほんとにすごいな」

レシラム‘‘それほどまでのものがあるとは、全く驚きだ。我も気持ち良く飛べる”

ランダ「これが古代のものなんだから、もう分かんねぇな」

レシラム‘‘王子に仕えていた我とて、知らぬこともあるものだな。
そうだ、知らぬといえば…。
シアンと言ったな…。どうも汝に馴れ馴れしかったと思うのだ。
奴のこと、知らぬのか?”

ランダ「そんなに馴れ馴れしかったか? まぁ、素顔も分からないし… 声だけで判断も難しいよ」

レシラム‘‘そうか…。我の考えすぎかも知れぬな”

ランダ「いちよう詮索してみるよ。あ、そうだ。父さんの話、途中だったから、続き、聞きたいな」

レシラム‘‘そうだったな…。題名は… 「フリード 白き翼を求めて 」
こんなところだな”

ランダ「おぉ、カッコいい!」

レシラム‘‘だろう?
今から20年ぐらい前… フリードはポケモンマスターを目指して旅に出ていた。”

ランダ「ポケモンマスター?」

レシラム‘‘うむ。つまりは、ポケモントレーナーの最高峰、最強のトレーナーだ”

ランダ「なるほど…。父さんらしい夢だな」

レシラム‘‘そんなフリードが私と会いたいと思ったのはだな、ただの好奇心からだったのだ。後にも先にも、奴だけだろうな。
フリードはハルモニアの血統なのもあり、我についての知識もあった。
旅の途中でシッポウ博物館で話を聞いた時に、さらに興味を持ったらしい”

ランダ「シッポウ博物館…。そういえば、ライトストーンに関する文献が展示されてたな」

レシラム‘‘そして、あいつは見つけ出したのだ…私を
古代の遺跡から偶然発見したのだがな。”

ランダ「それを見つけ出すのがさすがは父さんなんだよなぁ」

レシラム‘‘フリードの宝探しのスキルはズバ抜けておるだろうからな…。
ライトストーンを手にしたフリードは ハルモニア家に伝わる書物の通り リュウラセンの塔へ来て 私を呼んだ。彼のその純粋な好奇心に 我はつい応えてしまったのだ…。
爾の父は何と言ったと思う?”

ランダ「存在を確かめたかった だろ? 父さん、自分の目で確かめなきゃ気がすまない人だし」

レシラム‘‘息子ともなれば さすがだな。正解だ。”

ランダ「その純粋さが母さんを引きつけたんだろうなぁ…」

レシラム‘‘我ですら動かされたのだからな。Nもピュアであったが、フリードはそれ以上だったな。かつ、常にポジティブだった。ランダとは違うところだな。”

ランダ「両親ともどもポジティブなんだけどなぁ…?」

レシラム‘‘慎重なのも悪いことではあるまい。むしろ、真実に近づくにはそちらの方が良い”

ランダ「それもそうだな。」

レシラム‘‘その後、ほんとうに少しだけの時間を共に過ごし、お別れをした。きちんともとにあった場所に我を戻してくれたな。”

ランダ「その後、プラズマ団に…」

レシラム‘‘その通りだ。一週間も地にいたわけではないから 世界を知らぬまま眠りについたからな。悪用に近い形で復活させられてしまった。”

ランダ「ゲーチスの野郎…。会ったらただじゃすませない。」

レシラム‘‘未だに悔しいものだ。
その二年後にはキュレムに吸収されるし…。よく考えれば、踏んだり蹴ったりだったな」

ランダ「ご愁傷様です」

レシラム‘‘泣いちゃいそう”

泣きそうらしいレシラムを尻目に、ランダは話題を変えた。
レシラムの過去を掘り返すのも、ちょっとかわいそうだからだ。

ランダ「あぁっと、そうだ、せっかくだし、レシラムにニックネームつけていい?」

レシラム‘‘この私に?ほう、おもしろい”

きょとんとしてレシラムが答える。当然、長い人生の中で初の経験だ。
少し面食らっている。

ランダ「父さんのお話のお礼さ。
シリウス ってのはどうだい? 昨日、マクシュさんから聞いたんだ。あっちの世界で一番明るく輝く星の名前なんだってさ」

レシラム‘‘シリウス… 悪くないな”

そんなものの言い方をしつつ、レシラムは嬉しそうである。その証拠に 尻尾の炎からは青い色がちらついている。嬉しさで火の温度が上がっているのだ。そんなお茶目な部分を知る人は多くない。ポケモンと会話できるが故の特権である。羨ましいなぁ…。

ランダ「喜んでもらえてよかった」

シリウス‘‘では、レシラム改め シリウスである。 その… これからもよろしく”

ランダ「うん、頼むぜ」

シリウス「うむ。 (シリウス… 素敵な名前だな。ランダ ありがとう)」

白き龍はP2ラボを目指し、少し嬉しそうに大空を飛ぶのであった。



ルミナ「P2ラボって どこかしら?」

早速ランダに会うために旅を始めたはいいが そんな場所は見たことも聞いたこともなかったルミナ。いや、今は…。

トウヤ「お嬢様、P2ラボは 1番道路の近くでございますぞ」

ルミナ「そうですか。それではヘリを飛ばしま……飛ばしなさい。」

トウヤ「仰せのままに、ロゼルお嬢様。」

トウヤはヒゲを生やし、黒いスーツに身をつつみ、イケメン執事となっている。ルミナはといえば。淡いピンクのドレスを着こなしている。誰がどうみても お嬢様だ。名はロゼル・マース。 変装はバッチリである。
ヘリはヒウンシティにあるネット通販会社で買ったものだ。ネット通販を利用せず、本部で買うという、かなり珍しいこと…なのだが、思った以上にことはあっさり進んでしまった。流れに乗ったルミナが困惑するほどである。ん?金?

トウヤ「しかし、流石はマース家。このようなヘリも楽に落札してしまうとは 」

全額出費したセバスチャンことトウヤが呑気そうに呟く。
まぁ、歴戦のトレーナーともなると金は持っているものである。
とはいえ、ヘリは割と痛手…。

ルミナ(トウヤさん ほんとに申し訳ありません…!)

ヘリの燃料補給も終わり、準備は万端。いよいよ、大空への旅が始まる。ヘリコプターの性能はお墨付きで、我らが中枢世界でいうところの コリブリの愛称で知られるEC120bみたいなものだ。
要するに、低コスト・安全・小音なヘリコプターなのである。

あとはパイロットの問題だが、驚くことに、トウヤはヘリコプターを操れるのだ。小さい時からの趣味で、シミュレーションでもプロ並みの操縦技術であった。
資格はないから違法なのだが、そこは気にしたら負けである、


ルミナ「ほんとうに大丈夫なのですか?」

トウヤ「任せてください、ロゼルお嬢様。」

ルミナ「では… 任せましたよ」

ようやくお嬢様に慣れたルミナだが、どことなくまだぎこちない。巫女として育てられたため、丁寧な言葉はまだいいのだが、気品高く振る舞うのがどうも苦手である。

トウヤがいろいろと動かし、ヘリコプターが起動する。
ブルルルル…
その小さな機体がふわりと浮かぶ。
目的地はカノコタウン。既にトウヤが母親に連絡をとっており、話はついている。

トウヤ「よし、大丈夫だ。
カノコタウンに向けて出発しますよ、 お嬢様。多少の揺れにご注意を。」

ルミナ「お気遣い 感謝します」

風は東南東。見事に進行方向と一致している。
ルミナ、絶賛運気上昇中
このまま、うまくランダのところまで辿り着けるだろうか…?

ルミナ(ランダのこと、早く止めなきゃ…)

トウヤ「ふぅ。もう周りに人もいないし、大丈夫だな。
ルミナ、心配してもしょうがないさ」

ルミナ「はい…」

その不安な心は 巫女ゆえなのだろうか… 的中することとなる。
いや、やはりこれも運命…。
さだめ とは二つの捉え方がある。不変なものなのか、瞬間瞬間で変わるものなのか…。
それは 神のみぞ知る そういったところだろうか…。
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