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□bifrostT
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後ろめたさ、申し訳なさが、どんよりと、じんわりと境界の曖昧な広がりを持った薄闇を連れてぽっかりと佇む。

私が、マルコを、振ったんだ。
彼の気持ちに答えられなかったんだ。
私がマルコの気持ちを一方的に知っていただけで、だから彼は私がジャンと付き合い始めてからもずっと今まで通りに接してくれていたけれど。
私は、彼の心境についてきちんと考えたことはあっただろうか。
訓練に必死で、ジャンに一生懸命で、そうやって自分に都合の悪いことは見ないようにしてきたんじゃないのか。
現実逃避もいいところだ。
好きな人と友達が付き合うなんて、一体どういう心境になってしまうんだろう。
考えたくもない。
毎日が鬱屈で自己嫌悪と劣等感で息苦しくて、きっと生きていけない。
私には、とても耐えられない。

それでもマルコは、ジャンと私のことを暗黙のうちに認め応援してくれていた。
彼の器の大きさを思い知らされるようだ。

私はマルコに何かしてあげられたんじゃないのか。
私は、何も、できなかった。
いつもマルコから貰うばかりで、何一つ。

いつも優しい笑顔で、肯定的で、的確なアドバイスをくれて、仲間からの信頼も厚くて、将来は指揮官たりえる才能を持っていて。
そんなマルコを私は裏切ったのだ。
ジャンと付き合うことで。
そうして居心地の良い彼の隣でのんべんたらりとだらしなく過ごしてきた。
私だけが幸せに過ごしてきた。

私は、なんて業が深いんだ。
なんて、罪深い人間なんだ。


面倒くさいこと辛いことは先延ばしにして、考えることを放棄した。
巨鳥化も、この世界のことも。

うっかりこの能力のことがバレて壁内に知れ渡ってしまったら抹消されてしまうだろうこと。
エレンのような通常巨人ならともかく、飛行技術の進歩を徹底的に排除してきた王政府が巨鳥化できる人間を生かしておくはずがない。

そしてこの世界は残酷で美しい。
数え切れない程の人間が死んでいく世界だ。
選択肢を誤ればいつ私自身がそちら側に立つことになるかも分からない。
今まで生きてこれたことだって奇跡に近い。

だからこそ私はこのトロスト区訓練兵団に入団したんだ。
彼らに、知性巨人に接触するために。

私自身が、生き残るために。


 
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