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□bifrostT
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やはりここは進撃の巨人の世界なのか。
作品内での印象的な出来事は確かに次々と起こってはいたが、もしかしたら、という思いが邪魔をして確証を得られずにいた。
いや、確証を得ることなんて実際は不可能だ。
証明する手立ては、ない。
でも、アニのことを話したときのベルトルトのあの反応は。
まさしく、進撃の巨人を彷彿とさせるもので。
逃れられない運命なのか。
今ここで寝食を共にしている多くの訓練兵が、トロスト区防衛戦、奪還作戦で巨人に食われてしまうのか。
ぎゅ、と思わず拳を握った。
今すぐに訓令兵を降りて開拓地に移るんだ!
そう騒ぎ立てずにはいられない。
ぎゅ、と唇を噛み締めた。
でも、これは、なんの証拠もない。
私の記憶の中だけの出来事だ。
私がキチガイ扱いされて終わるだけ。
それだけで終わるならまだしも、自分の首を絞めてしまいかねない。
私は巨鳥化できる人間。
バレたら終わりだ。
憲兵団に連行されてスパイとして尋問され、解剖される。
私には、この壁の中に逃げ場なんてない。
そしてもちろん、壁外にもだ。
巨人が彷徨いているのはもちろんだし、何より食べ物がないと生きていけない。
いや、たしか壁外のどこかに罪人たちの住む街があるとも聞いたことがあるけど、実在するかどうかまで分からない。
私が生き延びるためには、彼らに、ベルトルトやアニやライナーに、なんとかして取り入るしかないのだ。
そのために、貴族でありながら、ウォール・シーナ内に住みながら、訓練兵団へと入団した。
ここでの訓練は過酷だ。
判断を間違えれば命を落とすことさえある。
それでも私は、彼らに接触しなければならないんだ。
まだその方法は分からないけれど。
一応何度もシュミレーションはしてみた。
けれど、どれも実用的ではなかった。
まず、私が巨鳥化できることを証明すること自体が難しい。
ユミルが雪山での訓練で巨人化したことがあったが、あれは吹雪いていたおかげで巨人化したときの蒸気が隠せれたんだろう。
けれど、そんなに都合のいい状況なんてそうそうないわけで。
何よりまず、私が壁内人類の味方ではないと、彼らの味方だと証明する手立てがないのだ。
彼らの背負っている任務の重大さを考えれば、素性の知れない私のことをそう簡単に信用してもらえるとも思えない。
一体私は、どうすればいいのか。


 
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