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□bifrostT
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座学の時間。
今日もベルトルトはアニより後ろの席に座っている。
教官を、黒板を見るふりをしてアニを盗み見ることができる席に。
アニは気付いているのかいないのか、気にしている素振りは見せない。
ベルトルトの気持ちを察して、胸がずしん、と重くなる。
つれないどころか、全く興味がなさそうなアニの様子に、片想いの切なさを想った。
それでもどこかほっと安堵している自分に気付いて、嫌気が差す。
ベルトルトの恋が成就して、幸せになってしまうのを、どうにも祝えない。
どうしようもない劣等感がずるずると、幸せそうに笑う彼らを黒く塗り潰す。


私は、羨ましいのだろうか。
妬んでいるのだろうか。

巨鳥なんていう化物の私と違って、彼らは同じ知性巨人で。
仲間がいることが、同類がいることが、羨ましいのだろうか。


ひとりぼっちは、寂しい。


なんだかベルトルトが遠い存在に思えて、行かないで、と願った。
嫌だ、置いていかないで。
お願い、連れて行って。

私は、ベルトルトのことを王子様とでも勘違いしていたのだろうか。
お姫様がどんな窮地にいても助けに来てくれるような、悲劇から救い出してくれるような王子様に。
私は、ベルトルトに救いを求めていたのだろうか。


私なんかと一緒に歩んでくれる人なんていないってこと、分かりきってるじゃないか。
馬鹿みたいに焦がれて。
馬鹿みたいに憧れて。

羨ましかった。
王子様に連れ出してもらえるアニが。

私は選ばれなかった。

お姫様ではない。
かぼちゃの馬車を引くためのネズミだ。
七人の小人だ。
村人Aだ。

私なんかがお姫様だなんて烏滸がましい。

どうせ私なんかと寄り添ってくれる人なんていないのに。
私のことなんか愛してくれる人、どこにもいないのに。


私は一体どうすればいいの。
人間にも、巨人にもなりきれない私は、一体どうやって生きていけばいいの。
何者にもなれない私は、どうすればいいの。


 
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