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□short
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※現パロ
柔らかい日差しを受けて、ぼんやりと意識が浮上する。
身体を包み込む優しい温もり。
ふわふわの毛布を被っていることを肌で確認する。
スプリングのきいたベッドの上で。
背後には熱を放つ存在。
ベルトルトが私のお腹に腕を回して抱きついている。
高身長の彼は、別段ゴツイわけではないが、その体の大きさ故にしっかりとした重さ、存在感を放つ。
背中に、腹部にその彼の重さ、安心感を感じながら微睡む。
朝ご飯食べなきゃ。
お腹空いたなあ。
そう思って、腕の中で半回転してベルトルトと向かい合わせになると彼はまだすやすやと安らかに寝息を立てていた。
起こさないようにそうっと、足元の方へ腕をくぐり抜けるように脱出を試みる。
寝ながらに気配を察したのか、ベルトルトの腕が、逃がさないとでもいうように抱きしめる力を強めた。
ベルトルトの胸元に頬が押し付けられる。
彼の胸に添えられた耳は、トクントクンと力強く規則正しいリズムで刻む彼の鼓動を脳に伝える。
心臓の音を子守唄代わりにして睡魔の手に落ちそうになった瞬間、目覚まし時計よろしく、ぐう、とお腹の虫が鳴いた。
ベルトルトの胸元を軽く叩く。
彼が眠そうに唸ったのを聞きながら顔を上げて窺う。
「朝ご飯食べよう。ホットケーキでいい?」
唸り声の延長線のようなかんじで、うん、と返事を寄越してくる。
今度は妨害されることなく、するりと脱出してベッドから抜け出た。
タネを作って、フライパンを火にかけて。
そうしていると眠そうに目を擦りながらベルトルトが起きてきた。
「おはよう、ナマエ」
「おはよ、ベルトルト。生クリームいるよね」
「うん」
「じゃあ、ホイップお願い」
ホットケーキの焼ける音だけしかなかった穏やかな朝に、ハンドミキサーの騒がしい機械音が加わる。
コーヒーでいいよね、と確認して、うん、というベルトルトの返事を聞くと、ホットケーキを焼く合間にドリップコーヒーを淹れる。
ついでにベルトルトの傍に寄ってボウルの中身を覗き込む。
うん、いいかんじ。
ちらりと上を向いて彼の顔を見れば視線が合って、どちらからともなく微笑んだ。
もぐもぐと咀嚼して口いっぱいに広がった甘さを嚥下する。
「しあわせー」
「うん、そうだね」
隣でホットケーキにナイフを入れて切り分けるベルトルトを見遣る。
視線に気付いて目を合わせて微笑んでくれる。
ああ、なんて幸せな朝なんだろう。
胸焼けするまで甘いものたくさん食べたい。
あなたと一緒にありったけの甘さで満たしたい。
そんな朝。
一口サイズに切り分けられたホットケーキをフォークに刺して、食べる?なんて差し出してくる。
あー、なんて口を開けて見せれば嬉しそうなベルトルトの手で運ばれてくる甘い甘いホットケーキ。
ベルトルトと一緒に過ごす朝は、格別に甘いのだ。
それが幸せで、何度でも味わいたくて、また私は彼のベッドに潜り込むんだろう。