メモ2*4

□えりたんはピッチャー、まゆちゃんはキャッチャー
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私がお風呂から上がって、戻ろうとしたとき、その扉から

「まーゆっ」


そう言って、ひょっこり顔をだしたのは、えりたんだった。




「えりたん、どうしたん?」


「へへっ〜」

その顔は、なにかをたくらむまるでいたずら少年だ。

「なぁに?えりたん、またいたずら?」

私が笑いながらそう言ったら、
えりたんは小さなバッドを
「ジャジャーン!」っと言って私に見せた。



「?」



「まゆちゃん、野球ごっこしよ!」




「…ほんま、いきなりやね。」



「あかん?」


なんだか寂しそうに首をかしげる彼女に、ダメなんて言えなくなってしまう。

「ええけど。」


そう言ったら、彼女はさっきまでの顔はどこに行ったのか…と思うほど、目をキラキラさせて聞いてきた。


「まゆちゃんどこやりたぃ?」


「私?…キャッチャー。」


わたしがそう答えれば、彼女が残念そうにする。



「えー。そやったら、誰が投げんねん!」


だから、わたしが投げるよと言って、
部屋を移動する。


「まぁ、そうやね。いいよ、私投げる。」


しかし、部屋を移動したあと、えりたんが私に渡したボールはほんものの野球のボールだった。

私は慌てて言う。


「あかん、あかん!ガラス割れるやろ」


「あ…やっぱり?」


えりたんは、ケラケラ笑ってそう言った。



「えりたん、打ちたいならバッティングセンターいかなあかんて。」



わたしがそう言ったら、彼女は首を横にふった。


「ちゃう。打ちたいんやない、殴りたいねん。このバッドもったら、もうフルスイングで殴ってええ!って言われてるも同然やん!」


「同然って…。」


私は、唖然とした。
彼女にはやっぱりSの血が入っていると思う。
けれど、私に一発殴らせて!なんて言いかねないから、それを回避するために話題をそらす。


「あ、そう言えばお茶会でね、私のバッドになら殴られたいって言ってた人がいたの、面白いやろ?」




「それ私やったら全力で殴るわぁ〜」



「そんなお客さんに…」






「やって、殴ってほしいんやろ?そら、手加減したら逆に申し訳ないやろ。」



かわいい顔であっけらかんとして言うから本当にギャップがある。

「えりたんが全力で殴ったら絶対に痛いよ。お客さんもう見にこれなくなったらどないするん。」


「それは…困るなぁ。」



わたしが、彼女に優しく諭せば、
彼女はちょっと上を見てそう言った


「そやろ?たまには、手加減してあげるんも大事なことやで。」



「ん〜。」



聞いているのか、きいていないのか分からないような彼女の返事に、彼女を見て名前を呼ぶ。



「えりたん?」



「なぁ、まゆちゃん。」


するとえりたんが私をパッと見ていった。

「ん?」



「まゆちゃんは、キャッチャーやりたいんやろ?なんで?」



「え?キャッチャー、楽しそうやん、下でサインとか出すの」


わたしが素直に答えると彼女はそれに食いつくように言った。


「でも、キャッチャーはピッチャーの気持ちもよまなあかんのやで」






「まぁ、そうやな。」


「まゆちゃん、今私がなに考えてるかわかるぅ?」


彼女が再びいたずら少年のような目でそう聞くから、思わず笑みがこぼれる。


「ふふっ、わかるで。」


私が、そう言ったら、えりたんは当てて?という目をした。







「抱き締めていい?やろ?」




「…」



私が彼女にそう言うと、彼女の顔がぽかーんとなった。




「あれ?違ったぁ?」



私が首をかしげたら、えりたんは赤くなって焦りだした。


「な、なんでわかんねん!」



「やって、えりたんそういう顔してたやん。」



私が笑いながら言うと、えりたんは感心したように呟く。

「まゆちゃん、すごぃなぁ」



「ふふ、えりたん、抱き締めて?」




私がえりたんに手を伸ばして、そう言ったら、彼女が私の耳元で小さく呟く。


まるで、子供がおねだりするみたいに。






「抱き締めるだけで終われる自信がないんやけど…」



「えらい素直やね…」



私が、そう笑って言うと、彼女はお願い?あかん?なんて目で言われて、
彼女の手を握って言う。







「ほんなら、えりたん、お布団連れてって?」


「ええの?」


「うん、優しくしてよ?」



「あん!」









えりたん…ちゃんと私のサインよみとってね?

私も、えりたんのことちゃんと受け止めるからね…。
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