メモ2

□まゆさんの怒り?
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まゆは、ちょっかいをかけても全然怒らない。

私が急に欲情したって
「もぉ〜、えりたん!」
ぐらいで済まされてしまう。

けれど、私のトップ発表があった次の日は何かが違った。

いつもみたく、私が「まゆ〜!」と言って、夕飯を作る彼女の体を触りまくったり、キッチンでウキウキして動きまわっても、まゆは黙ったまま。

でも、しばらくした時、彼女が静かに呟いた。

「危ないからあっちいっとき」

私にはいつものことだったから、
頭から「?」 が飛ぶ。

「どうしたん?まゆ?変やで?」
なんて言いながら、またじゃれついたら
今度は少し大きな声で

「危ないからあっちいっとき!」

ときつく言われてしまった。

まゆも疲れとるんや…こんな時に彼女の家へきてしまった自分が悪いと、反省しながらソファーにポツンと座って待つことにする。

料理ができると、まゆは私の大好きなハンバーグを持ってきてくれた。

「あ…」

そのハンバーグはいつもより大きなサイズで、ケチャップで「おめでと」っと書かれていた。

さっきのことで彼女が怒っていると思っていたけれど、そこにあったのはまゆの笑顔だった。

「怒ってないん?」

本当はありがとうっと言いたかったのに、ビックリして、嬉しくて、思ったこととは違う言葉が出てしまう。

「怒ってないよ。えりたんがキッチンでくっついててくれるのは、ホントは嬉しいんだ」

「なら…なんで?さっきは体調わるかった…とか?」

まゆは、八つ当たりとかする人間じゃない。だから、舞台の失敗とかを持ち込むこともない。
ならば、体調が悪かったのではないかと心配になる。

「ううん、元気だよ。
でも、えりたんトップになるんやで?
今までみたいに私の組子やないねんから。
だから、危ないことしたらあかん。
さっきみたいにえりたんが私の健康のこと考えてくれてるって、分かってるし、凄く嬉しいけど。
たぶん、雪組さん行ったら、おんなじようにみんながえりたんを心配してくれる。だから、危ないことしたらあかんの」

そういってまゆは、ふふっと笑う。

私はそのまゆの言葉に感心するやら、嬉しいやら…心があったかくなるのを感じた。

「ありがとう、まゆ…気をつける」


そう言って、私はいい香りのするハンバーグに食らいつく。

まゆは、そんな私を見てまた優しい笑顔をしてくれた。

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