メモ2

□明日まで見ないで
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東京公演中のえりたんから、夜に電話がきた。

「もしもし?」

いつもどおりの彼女の声に妙に安心する。

「どうしたん?」

「あのさ、まゆのとこで明日のスカステでやる番組撮っといてくれへ ん?」

「いいよ。何時の?」

「8時」

「わかった。8時からね」

8時か、なにか今後の参考になる作品でもやるんだろうと私は思った。


「録画するんは明日でええからな、じゃ、おやすみ」

「…わかったけど、ちょっと待って」

よくわからないまま足早に電話を切ろうとする彼女を私は止めた。


「ん?」

彼女の低い声。
もう少しだけ話していたい。

「そう言えば公演はどうなん?」

「なんも、問題なしや」

「そっか。よかった…」

「まゆは?」

「調子いいよ。お稽古順調やし」


そう言いながら私は、えりたんが明日でいいといった録画予約を忘れないうちに準備しようと番組表を開いた。

「そら、よかった」

そうえりたんが言った時、頼まれた録画時間の番組が目にはいった。

「あ…」

「ん?まゆ?どうしたん?」

私が思わず黙ると、えりたんは心配する。

「…録画」

「あ、」

えりたんは、なんとなくばつが悪そうな声を出した。

「なんで私の公演の録るん?」

「や…それは、その…」

「えりたん?」

「まゆのその役すきやってん。けど、明日はおよばれで見れんねんもん」

彼女は、なんだか恥ずかしそうに言った。

「…」

どんなに忙しくても、遠くで会えない時でも、私を思っていてくれる彼女に胸がジンとなる。

「まゆ?」

えりたんが恥ずかしそうに、そして申し訳なさそうに私を呼ぶ。

「私もその役すきやったよ、その役…//」

「…怒って怒ってへん?」

「怒らないよ。嬉しい」

「よかった〜」

私の言葉にえりたんの安堵が伝わる。

「えりたん、ありがとう」

「ん?なんで?」

「いつも好きでいてくれて///」

素直にお礼を言ったけど、彼女は「あ、当たり前やっ//」と言い捨て、すぐに電話を切られてしまった。

でもきっと電話の向こうで彼女は赤くなっている。

どんなに離れていても私には心で彼女が見える。

だって私も彼女が大好きだから。

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