メモ2
□許可
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昨夜は私のお茶会で今日は少しばかり疲れがたまっていた。
なのに、ほぼ同時帰宅のまっつは、そそくさと一人お風呂に行ってしまった。
せっかく、2人で入ろうと思ったのに…。
まっつも疲れとるんかな…?
なんて、考えているうちにソファーの上でいつの間にか寝てしまっていた。
「壮さん、壮さん、起きて?こんなとこで寝たら風邪引くで?」
私は、まっつの香りとあの柔らかな包み込むような声で目を覚ます。
目を擦りながら起き上がると、まっつがホットミルクのカップを黙って手渡してくれた。
「ありがとう」
「はい…お疲れですね」
「うん…ちょっとな」
まっつはそれ以上何も聞かず隣に座って、ファンの方からの手紙を読んでいる。
私が寝ている間もずっと読んでいたのか、机の上には手紙が山積みで読んだものと、読んでないもののツインタワーが出来上がっていた。
でも、そこに一枚だけ分けられた手紙があった。
「まっつ、これなに?」
私は不思議に思って、その手紙を手に取る。
すると、まっつの表情が変わった。
「あっ、待って!」
その表情に私の中から、ちょっぴり小悪魔が顔を出す。
そのまま、立ち上がって封筒から手紙を出そうとすると、
「あかんて!それ、返してください!」
っとまっつも立ち上がって、手を伸ばす。
こんなとき、少しだけ背が高くてよかったなんて思う。
「なんやねん、そないに、あわてて。読んだらあかんようなものなん?」
私がソファーを挟んで、走るとまっつもついてくる
「だ、だめですってば!」
しばらく走っていたら、まっつは観念したのか、呆れたのかソファーに座った。
「もう、負けました…」
「じゃあ、読んでええ?」
「はい…」
その答えに一時は喜んで、私は立ったまま手紙を読んでみたものの、何も隠すような内容はない。
内容と言えば、昨夜私のお茶会に参加してくれたまっつのファンの感想だけだ。
「なんやこれ?私のお茶会がどうかしたん?」
「わからないなら、いいですょ//」
そう言ったまっつは、私と反対の方向を向いてしまった。
「ん?」
私は少し考えたけれど、やっぱりわからなかった。
「まっつ」
私はまっつを呼ぶ。
「…」
無視かい。背中をトントンしながらもう一度呼んだ。
「まっつ」
「…」
…大きい声で呼んだろ。
「まっつー!」
私は大きい声で呼んで、彼女を無理やり振り向かせると顎を持ちあげ、その唇に私の唇を押し付けた。
「んっ!///」
「やっとこっちむいてくれた」
「…/////」
「どうしたん、言うてみ!」
「…」
もじもじしてなかなか手紙の真相を話さない彼女を覗き込む。
「ん?言うてみ」
「なんで、そんな偉そうなん?」
なんやって?
「まっつ、わたしを怒らせたいんか?」
「違う!」
そういってまっつは首を横にふる。
「ごめん、ちょっとわからへん。この手紙どういうことなん?」
私は半ばやけくそになってまっつを問いただす。
「私だってまだ、壮さんから休みの許可なんかもらったことあらへんのに…ファンの人ずるいやん」
「…あっ、それあの「仕事は壮一帆さんが休んでいいって言ってたって言えばわかる」ってやつのこと?」
まっつはなにも言わずに静かに頷く。
「なんや、嫉妬なんて可愛いやん」
あ、声に出てもうた。
「可愛くなんかないですよ…」っと呟いて、まっつはポカッっと私を叩いた。
いつもなら倍がえしやけど、
今日のまっつは可愛いから許そう。
「まっつには、休みの許可なんかいらんやろ」
彼女の小さな顔を両手で包み込んで言う。
「え?」
「うちらはいつも一緒なんやから」
「まぁ、そうですけど」
「でもまあそんなに言うんなら、特別や!」
「特別…?」
「そっ、次の休演日は壮さんと2人だけで過ごしていいっていう許可だしたろ。どうや!まっつだけやで!」
私は、決め台詞のようにドヤ顔で斜め上を向いた。
「…」
それでも、まっつからは何の言葉もない。
不安になって彼女の方を見た瞬間…
「んっ!!…///」
まっつから優しいキスをしてくれた。
唇が離れていくころ「まっつ?」と呼ぶと
「さっきのお返し」
と顔を赤らめてそう言った。