メモ2

□好きなだけどうぞ
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夕飯作りのために冷蔵庫をのぞくまっつを横目に、私はテレビの天気予報を見る。


「ああ、明日は雨なんや、はよ入らんとファンの人が濡れてまうな」とそんなことを考えていたら、まっつが機嫌を損ねたように私を呼ぶ。

「壮さ〜ん!」

「あん?明日雨やて」

冷蔵庫から顔を上げた彼女は、頬を少し膨らませて、まだ怒っている。

「ちゃいます。冷蔵庫ん中、なんもないじゃないですかぁ」

「そう?」

「はい。私、コンビニでなんか買ってきます」

「私も行く」

私も行くと行ったら、少し機嫌を直したのか、まっつは黙って身支度を始めた。

しかし、夜の道は見事なまでに人がいない。

コンビニにつくと、それぞれで欲しいものをさがしはじめる。

狭い店内で合流した時、
「なあ、壮さん」と彼女が私の名を呼んだ。

「みて!これ!」
そう言った彼女の視線の先には、パンダの形のチョコレート。

自分でも呆れるけれど、まっつの顔が可愛くて、そのパンダに少し嫉妬したのかもしれない。
ちょっと嫌味っぽく「またパンダやな」と言ったのだけど、彼女は嬉しそうだった。


「このチョコ買って帰ります」

「好きなだけどーぞ」

欲しいものを一通り買って店の外に出ると、ポツポツと雨が降っていた。

「あ・・・もう降ってもうたか」

「・・・」

私たちは2人で空を見上げる。

「傘買ってくる、一緒でええよな?」
そう言って私は自分の買った物を彼女にもたせた。

「・・・すみません、ありがとうございます」

彼女の返事を聞いて、私はビニール傘を一本買う。

そして、「いこか〜」と傘をひろげた。
まっつは、「すいません」とつぶやいて、控えめに傘の中に入ってくる。

歩き出してからも、まっつは控えめに入っていて、濡れそうやななんて思いながらも、恥ずかしいんやろなーなんて思って、黙って前を見た。
そうしたら、遠くの方に仲良く傘を持ちながらも、手をつないで肩を寄せ合うカップルが歩いていた。

こんなときに手つないだら、まっつはどんな反応をするんやろう?と思って、傘を持っていない手でまっつの手に触れると

「・・・///。・・・そ、そうさんっ?こんな外であかんて」

そう言ってやんわりと私を離そうとするから、

「濡れてまう」といって、まっつの肩を引き寄せた。

「・・・!///」

びくっとしたまっつの肩はやっぱり濡れていた。

「大丈夫、だれもおらんわ」

そう言って家まで歩く間、まっつは相当恥ずかしいのか、下を向いてしまって、
そんな姿が可愛いなと思ったら、キスしたいなーという気分になってしまった。

でも、ここでしたら、もうまっつは傘から出ていくことは間違いないと思って我慢した。

傘をとじて、家の玄関をあけると後ろからまっつが入ってきた。

カチャッと扉がしまるのと同時に、私がキスをしようとするとまっつが私の胸を押し返す。

「待ってください」

「なんやねん。ええやん家なんやもん」

「お腹・・・すきました」

「まっつは、わたしよりご飯が大事なんか?」

「・・・今は」

「・・・」

完璧に拒否られた・・・。

まっつはスタスタと部屋に入っていった。
しかし、その背中は雨で濡れていた。

私は彼女を追いかけて肩を掴む。

「駄目ですよ、ご飯はちゃんと食べな」

振り返った彼女の瞳は揺れていた。

「や、そうやなくて」

「え?」

「ジャケット脱ぎ?濡れてる。風邪引くで」

そう言ったら、まっつの顔がカッと再び赤くなった。
私が、またキスを求めたと間違えたことに恥ずかしくなったのだろう。

それを知らないフリをして私は先にキッチンに向かおうとしたら「あの・・・」と彼女に呼び止められた。

「ん?」

振り返ると、まっつはさっきより言いにくそうに言葉を紡いだ。

「ご飯食べたら好きなだけ・・・キス、してもいいですよ・・・//」

「・・・!///」

まっつの言葉に私は思わず買い物袋を床に落とし、彼女を抱きしめた。
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