メモ2
□白亜紀からのどーん!
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私がソファに座って、コーヒーを飲みながらテレビを見ていると、当たり前のように壮さんは私のとなりに座った。
その時ちょうどCMでティラノサウルスが映る。
「あ、壮さんのご先祖さん」
「ほんまや」
「壮さん、ティラノって足がそこまで速くないらしいですよ。知ってはりました?」
「え、そうなん?でも私は走り方がよくわからんようになるで(笑)」
「それとこれとは関係ないやないですか」
「あ、そうか。ていうか、なんでそんなこと知ってるん?」
「え、なんでやろ?どっかで聞きました」
「あはは、なんやえらいアバウトな情報やなあ。そやけど、ティラノが目が良いってのは聞いたことあるで」
「へぇ〜、そうなんですか」
私のアバウトな情報に、彼女もまたアバウトな情報を追加していく。
ハッキリ言ってティラノサウルスのことなんて本当はどうでもいい。
壮さんとこんなどうでもいい話ができることがすごく幸せな時間なんだ。
すると突然、壮さんが私の額に自分の額をくっつけた。
「目がいいから、こうやって人の心を盗み見んのも上手やねん」
「…っ//」
壮さんとの距離が近すぎて体温が上がるのがわかる。
「まっつはなに考えてるんかな〜って(笑)」
彼女は目をつぶって、私の考えてることを当てようとする。
「壮さん、近いです…//」
「で、なに考えてるん?」
しかし、すぐに目を開けて開き直ったように聞いてきた。
「気になるなら、当ててみてくださいっ…//」
「んー」
そう言って考えるふりをした彼女の手が私の後頭部を抱いてキスをする。
「…ん//」
思わず目を閉じると、さっきよりもはるかに私の体は熱くなった。
唇が離れると、壮さんはあっけらかんとした顔をしていた。
「あれ…「キスして」やなかった?」
「ち、違いますよ…//」
私が否定すると、ケラケラ笑いながら
「あ、間違えた?そりゃ、捕食者の本能が出てしまったんやな〜ごめんごめん」といつものようにおどけてみせる。
「捕食者って…//」
「まっつの匂いを嗅ぎつけて、狙って離さへん捕食者やで。ほら、もう捕まえてるし」
「…//」
壮さんは私を苦しいくらい強く抱きしめる。
「あ、あの…壮さん?」
「ん?」
「ティラノはピュアやなかったんですか?」
「ピュアやで。そのまま白亜紀から降りてきたから野生の本能もそのままきてん」
「…そんなの屁理屈ゃ…//」
「なぁまっつ…ええやろ?」
そう言った彼女の手は、私の身体を這っていった。
壮さんのカッコイイおねだりに、私はどうしてもダメと言えない。
それはきっとありのままのピュアな彼女の言葉が…行動が…私に嘘のない真実を見せてくれているからだと思う。