メモ2

□その名を呼べば
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私の公演が終わって、彼女が公演中。
えりたんの家で待っていた。


1人ソファに座って、私は彼女と一緒にいた日々のことを思い出していた。

「えりたん…」


彼女のいない部屋で、
彼女の名前を呼ぶ。


勿論、返事はない。

でも、その名を呼ぶだけで、
とてつもなくいとおしい気持ちになる。


「えりたん…」

ただ1人心惹かれた人。

まだ出会ったばかりの頃…
学校生活…
初舞台…
下級生の頃の花組時代…
そして、私がトップになってからの花組時代…

私たちはいつだってそばにいた。

そばにいることが当たり前で。

いつかまた一緒に舞台に出れると、信じつづけた日が懐かしい。


けれど、あなたもトップになって、もう一緒に芝居をすることはなくなった。


「えりたん…また一緒に舞台に立ちたいね」

「うん」

「…え?」

彼女の声がした。
思わずその声の方を見ると、扉の前に彼女が立っている。


「えりたん…おかえり」

「ただいま、まゆ。どうしたん?」

私は立ち上がって、立ったまま不思議そうな顔をしていた彼女を抱き締める。

「えりたんのこと考えてた…」

「ふふっ…まゆ…温かいっ…//」


私の腕の中で、彼女は猫のように気持ち良さそうにすりよってきた。


「えりたん…」

「うん?」

背中を撫でると、彼女が私を上目つかいで見る。



「…大好き//」

「…うん。私も」


私が告白したら、当たり前のように彼女も答えをくれる。

その当たり前が…なによりの幸せだね。


「ねえ、えりたんキスしていい?」


私は、彼女の返事をもらう前に、その唇に口づけた。
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