メモ2*2

□早く起きた朝は
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その朝、私が目覚めると、隣にいるはずのえりたんがいなかった。


気だるい身体を起こして、何も身につけていない体にパジャマの上だけを羽織って、寝室の扉を開けてみたけれど、物音ひとつしない。




「えりたん…?」


呟くように呼んでみるけど、返事がない。


浴室の辺りまで歩いていったけれど、どこもシーンとしたままだった。


どこに行ったんだろう?


彼女が私より早く起きるなんて珍しい。

なんだかとても不安になる。

今日は午後からお稽古だと言っていて、まだうちにいてもいいはずなのに。


不安と寂しい気持ちが入り混じったまま、リビングに戻って、ふと机の上を見る。


『朝食を買ってくる。』

それだけが書かれたメモがあった。


なんだ、、、よかった。

私は、そのメモに安堵で思わず笑みがこぼれた。


するとその時、玄関の方からガチャガチャとする音がして、彼女が入ってきた。


その足音はだんだんおおきくなって、
私の前に現れる。


「あ…もう起きてしもうたん?」


「お帰りなさい、えりたん」



私がそう言うと、彼女は荷物を下に置いて、着ていた少し丈の長いコートを私に羽織らせてくれた。


「こんな格好してたら、風邪引くで」

耳もとで囁かれた優しい声に包まれて、こんな格好で必死になって彼女を探していたことがなんだかとても恥ずかしくなる。

「だって、えりたんがおらんかったから…//」

顔が赤くなったのを隠したくて、つい不満を漏らした。


「私を探してたん?」


彼女が私の顔をのぞきこむ。

「…」

私が黙って頷くと、彼女の目が少し大きくなる。

「でも、メモしてったで?」


「どっか行っちゃったって寂しかったんやもん、今、、気づいたの」


私が心配したと言うと、真面目な顔で謝る彼女。

「ごめん…」



「ううん…いいの」


普段のやんちゃな彼女も好きだけど、こうやって温かく包み込んでくれるえりたんからは、本当に愛が溢れている。
私は首をふって、彼女に微笑んだ。



「ごはん…なに買って来てくれたん?」


「あ…えっと…な…」

「ん?」


彼女がちょっと口籠ったのを不思議に思って、首をかしげる。


「…フルーツと玉子と牛乳やな…」


「え?それだけ?」


彼女は、袋の中身を告白してくれたけれど、それはとても今すぐ食べれるような朝食とは違っていた。


「うん。ごめん。まゆが作らんでもええように買いにいってんけど…」

「うん…」


私も、えりたんはそうやって私に気を使ってくれたのだとわかっていたから、不思議に思って次の言葉を待つ。




「出来た料理見てるうちに、まゆの料理食べたくなってしもて…//」



「ふふっ」


彼女からの言葉が本当に嬉しくて、思わず笑みがこぼれる。



「やっぱり、まゆのご飯食べたいねん…//」


今度は彼女が赤くなって呟いた。


「嬉しいよ」

「え?」


「私のご飯が食べたいって思っててくれて」


私が気持ちをつたえると、彼女が私から目をそらして、また口ごもる。


「うん…。あ、でも…//」


「ん?」

私が彼女の顔をまた覗くと、彼女の両手が私の顔をそっと包み込んできて…

「あっ…んっ//」

口づけをくれた。


「やっぱり、まゆが一番にほしい…//」



「…っ//」

私の背中を彼女の手がすーっと触って、素肌を優しく包み込む。

だから私も彼女に腕をのばして、抱き締めた。



早く起きた朝は、あなたを堪能したいから…。

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