メモ2*2
□今夜泊まっていかない?
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明日は朝からお互いお稽古だという日、普段はお互いの家にその日のうちに帰るのが普通だった。
その日も、えりたんはそうしようとしていたし、勿論私も、彼女のことを気遣ってそうしようとしていた。
時計が11時を過ぎた時、えりたんが荷物をまとめてソファから立ち上がった。
「あの…そろそろ…帰ります。」
「そう。気を付けてね。」
私は、見ていた雑誌から目を話さず、棒読みでそうさらりと言う。
「あ…はい。」
「…。」
彼女がなにか言いたそうな声で返事をしたので私は、見ていた雑誌から顔をあげて、ソファに座ったまま彼女を見上げた。
「あの…ゆうひさん…。」
「…ん?」
私が顔をあげると、彼女は少し寂しそうな顔をして、何かを我慢しているような、そんな感じで言葉をいいかけたけれど、やっぱり押し殺した。
「あ、いえ、やっぱりなんもないです。」
彼女が、そう言ってクルリと私に背を向けてそのまま玄関へと向かっていく。
「うん。」
私は、そんな彼女の背中を見て、彼女が言いたいことが手に取るようにわかる。
"今夜そばにいたい"
本当に彼女がそう思っているかはわからないけれど、たぶんそう。
だって、私も同じだから。
私も立ち上がって玄関まで行くと、彼女は靴を履いて立ち上がったところだった。
「えりたん…」
私がそう言って彼女を呼ぶと、彼女が振り返る。
「はっ…んっ//」
振り返った彼女の口にキスをおとす。
口づけを終えて、彼女を抱き締めて耳もとでささやく。
「ねぇ、素直になりなよ。」
「…//」
「今夜、泊まってきなさい。」
「…はい//」
顔は見えないけれど、彼女が私の背中に手をやって、私の肩に頭をすりよせて返事をくれたのが私は嬉しかった。