メモ2*2
□いい子で待ってます。
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お風呂から上がると、彼がパソコンに真剣にむかっている姿が目にはいる。
その後ろ姿は、とても姿勢がいいのに僕より先にお風呂に入ったあと、適当に乾かしたその髪は、あちこち違った方向を向いていた。
その姿が、なんだか彼を表しているようで、僕は思わず笑みをこぼす。
そして、彼と僕のミルクを温めて、彼のデスクに置いた。
「ヘイリー、仕事ですか?」
僕は、彼のカップを置いた手で、彼の肩をポンっと叩いた。
すると、彼が僕の方に顔だけ向けて言う。
「ああ、はい。ミルク、ありがとうございます。今週中に終らせなきゃいけなくて。あ、アルバートさん、私のことは気にせずに寝てください。」
「そんなわけにはいきませんよ。あなたが頑張って仕事しているのに…」
僕は、自分のカップもデスクに置いて、彼の髪を片手で整えてやりながらそう言えば、彼は少し赤くなりながら、喋りだした。
「え、でも…明日はダンスホールで新しいダンスの発表があるんですよね?」
「ええ。」
僕は頷くと、彼は少し焦って、首を横にふった。
「じゃあ、はやく寝てください!すぐに私も布団に入りますから。」
「それなら尚更まってますよ。」
彼の、すぐに。という言葉に僕は反応して、そう返せば、彼はパソコンと僕を照らし見て、呟いた。
「でも…」
「今夜は、あなたの温もりを抱き締めて眠りたい。」
僕は、彼にちょっといじわるしようと思って、彼の耳元で囁くと、
彼は、恥ずかしがるどころか、真剣な顔で聞いてきた。
「…不安…なんですか?」
彼の言葉は当たっている。
けれど、今までは僕のほうが彼のことをわかっていたと思ったのに、
今は彼も僕のことをわかっているようになっていて、それがなんだか嬉しかったり、おかしかったりする気持ちのが大きかった。
だから、少し笑いながら言う。
「まぁ…少しね。新作は、いつも緊張します。」
僕が素直にそう言えば、彼は少し笑った。
「ふふっ…」
「ん?」
なぜ、笑ったのかと優しく目で問えば、彼は微笑みながら答えてくれた。
「いや、アルバートさんが素直な感情を出されるなんて珍しいから…つい。すみません。」
彼は、頭を下げながらそう言ったので、僕は彼の頬にキスを落として言う。
「あなただからですよ。」
「私…だから?」
「いや、あなたのおかげでとでも言いましょうか。」
「…?」
「あなたのような真っ直ぐな人といるから、僕も少しだけ今までより素直になれたように思います。」
「アルバートさん…」
彼が僕の名前を呟いたのを聞いて、僕はカップを持ってソファに腰を掛けた。
「さ、頑張ってください。僕はここでいい子に待っていることにしますよ。ははっ。」
「ふふ、はい!」
彼はまた笑顔になって、パソコンに向かった。