進撃の巨人

□ラブストーリーは突然に〜出会い編1〜
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〜出会い編〜

高い所にある物を取るのは苦手だ。
目的の物は本棚の一番上にある。ずっと探していた本だ。
回りを見渡しても踏み台になるものはない。店員に助けを求めるのは癪だ。チッっと舌打ちをしてもう一度手を伸ばす。
つま先でバランスを取り精一杯手を伸ばした。指先に本が触れる。あとちょっと•••しかし、バランスを崩してしまった。
『うわっ』
そのまま後方へ倒れる•••衝撃を予測して目を瞑る。•••が、無事だった。代わりにトンっとした優しい衝撃と心地いいテノールの声が降ってきた。
『大丈夫か?』
目を開けると頭上30cm上方から覗き込んでくる碧い瞳と目が合った。
瞬間、碧に引き込まれその瞳から目が離せずキョトンとしてしまった。
『この本だろう?•••大丈夫か?』
反応のない俺に困ったのか、大きな手で俺の髪を掻き上げた。その手のひらの気持ちの良いこと!思わず目を細めてしまった。
フっと微笑まれ我に返る。慌てて身を翻し頭を下げた。
『すまない!失礼する!』
真っ赤になっているであろう顔を隠すように俯いたままダッシュで逃げた。後ろで何か言ってるみたいだが振り向く事もできなかった。

心臓がバクバクいってる。とりあえず帰ろう。
顔がまだ熱い。頭の中がグルグルしてるしわけがわからない。ふらふらしながら家に着く。しかし、郵便受けを見て一気に冷めた。
『気持ち悪りい•••』
郵便受けにはどこで撮ったのか俺の隠し撮り写真と百合の花。
雑に引っ張り出し、写真を破り外のポリバケツの中に花とともにぶち込んだ。
折角、気分が、良かったのに台無しだ。リヴァイは一ヶ月ほど前からこうした嫌がらせを受けていた。所謂ストーカーである
時計を見ると夕方だ。
『何か疲れたな•••メシでも作るか』
風呂からあがり、ぼーっと今日の出来事を思い出す。
見たことのない綺麗な碧い瞳。ずっと憧れている地平線まで広がる空の碧と同じだった。
『綺麗な瞳だったな•••チッちゃんと礼言ってねぇや』
舌打ちして何と無く後悔する。もう二度と会う事がないと思うと少し胸が痛んだ。


久々の休日、なんとなく本屋に立ち寄った。ぶらぶらと本を物色していると懸命に手を伸ばし本を取ろうと頑張っている少年を見つけた。
手を伸ばしすぎてTシャツから白い腹部が見えている
『可愛いな•••』
ガラにもなく呟いてしまった
しかし、そろそろマズいかな。バランスを崩して倒れてしまいそうだ。
案の定バランスを崩した少年の後方へ回り込み抱きとめる。すっぽりと収まってしまう大きさが何ともいえない。
『大丈夫か?』
少年はキョトンとした顔で固まっている。
『この本だろう?大丈夫か?』
艶やかな黒髪を掻き上げて切れ長の瞳を覗き込む。触り心地の良い小さな頭を撫でてやると、まるで猫のように目を細める仕草がたまらなかった。
少年なハッと我に返ったようで慌てて身を起こした。もう少し触っていたかったのに残念だ。
真っ赤になって礼を述べてダッシュで逃げて行ってしまった。せめて名前を聞こうと思っていたが逃げられてしまっては仕方がない。
ふと下を見ると一冊の手帳が落ちていた。手に取って中を見ると先程の少年の顔写真があった
『学生証•••リヴァイか。ん?17才?•••14、5才ぐらいかと思っていたが、なるほど。』
学生証に書かれている住所をチェックすると地図で場所を確認する。
『届けに行くとするか』
思いがけず少年との接点を見つけて心が弾んだ。

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