進撃の巨人

□密約
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エレン奪還作戦が終了し多大な損害とともに調査兵団は帰還した。
その多大な損害の中で最も大きな損害は団長エルヴィンの右腕損失であろう。
誰もが絶望し祈る気持ちで団長の容体を案じていた。

『リヴァイ、エルヴィンの手術終わったみたいだよ。行ってあげなよ。』
真っ青な顔で自室のソファに座り込むリヴァイにハンジは声をかけた。
団長負傷の報を受けてからリヴァイは食事をしていない。食べても吐いてしまうのだ。故にふらふらで顔色も悪い。人類最強がこんなだと士気が下がるという事で団長代行という名目で書類整理で自室に引き込まさせていた。
『エルヴィン、生きているのか?』
『自分で確認してきなよ。そのほうが安心するだろ?ほら、今は人払いさせてる。行ってきな。』
ふらふらの体のどこにそんな力が残されていたのか、跳ねるように立ち上がると乱暴にドアを開け飛び出していった
『全く、アイツをヘコます人間なんて貴方ぐらいだよ・・・』
呆れたように呟いて何の罪もない乱暴に開け放たれたドアを見つめた

走って、走ってエルヴィンの部屋に辿り着きドアを開けた。
そこには包帯だらけのエルヴィンが眠っていた。静かにまるで死んでいるように眠っていた。
呼吸も忘れてエルヴィンに駆け寄りその左胸に耳を当てた。トクン、トクン•••規則正しい心音が聞こえてリヴァイは力が抜けた。
左胸に耳を傾けたままエルヴィンの右腕に手をのばす。
ない•••
リヴァイの頭を優しく撫でる腕がない。悲しくなる。
『でも、生きて帰ってきた•••』
ランプの焔に照らされて蜂蜜色に輝く髪に触れ、頬を撫でる。
冷たい唇に触れると微かに暖かい吐息を感じる。普段はこんなに近くでエルヴィンの顔を見る事がない。リヴァイは眠るエルヴィンに跨がり吐息を感じる程唇を近づけた。
『勝手死ぬな。お前は俺が殺すんだ。その息を•••その心臓の鼓動を止めるのは俺だ。』
エルヴィンの首に指を這わせ囁く。
『誰にもやらない、お前の心臓は俺の物•••』
冷たい唇に唇を重ねる。
微かに血の味のする•••誰も知らない二人だけの密約

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