進撃の巨人

□ラブストーリーは突然に〜捕獲編2〜
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《ーースミス様、ミケ ザカリアス様とハンジ ゾエ様がお見えになっております。》
インターホンからコンシェルジュの声がした。
『通してくれ。』


高層マンションのエレベーターの中、二人の男女は上層階へ昇っていく。
一人は外の景色を眺め、一人は何やらぶつぶつ呟いている。
『ーー邪魔してやるんだから。エルヴィンに集るハエ共め〜・・・』
ふぅ・・・っとため息ひとつ。ミケはハンジの頭を小突く。
『落ち着け。今日はストーカーの被害者に会うんだろうが。そんな鬼気迫った顔してどうする。』
ぶぅ〜っと膨れっ面のハンジは『わかってるよぅ・・・』っと拗ねる。
エレベーターは最上階に着き二人はエレベーターを降り、そしてエルヴィンの家の玄関にやって来た。
スンッ・・・
ミケが鼻を鳴らす。
『ーーやっぱりリヴァイの匂いがする。・・・まさか、な。』
『え?え?どゆ事?』
ピンポ〜ン・・・
ガチャリーードアが開いた。
微かにしていたリヴァイの匂いが強くなる。ミケは確信した。エルヴィンの所にリヴァイがいる、と。そして、ストーカーの被害者はリヴァイだとも。
『よく来てくれた。さ、入ってくれ。』
二人は中に通される。
一歩足を踏み入れて、ミケは動きを止めた。
『ミケ?どしたの?』
訝しるハンジの声など聞こえない。口に手を当て俯く。その手が震える・・・
リヴァイの匂いに紛れて《あいつ》の匂いがしたからだ。
『どうした?』
部屋の奥からリヴァイが出てきた。なかなか客人が入ってこないのを不思議に思ったのだろう。
と、その瞬間・・・
『クソ小っせぇ〜〜!!』
ハンジが猛烈な勢いでリヴァイに抱きついた。エルヴィンもミケも止めるに間に合わなかった、もちろんリヴァイがガードする暇だってない。
『か〜〜〜っ変わんねぇ!無愛想なのも変わんねぇ!!』
グリグリわしゃわしゃ頭を撫でくり回す。リヴァイは一瞬放心していたが気を取り直してハンジに蹴りをお見舞いした。
『ぐはっ・・・』
ハンジは床に沈んだ。
『てめぇ!いきなり何しやがる!!』
慌てエルヴィンの後ろに隠れて、野良猫が如く毛を逆立てて威嚇した。
その光景にミケは笑ってしまった。そう、あの時ハンジがリヴァイに初めて会った時と同じだったからだ。
何年経っても、何度生まれ変わろうとも変わらない光景に嬉しく思った。
『ハンジ、大人しくしろって言っただろう?まったく変わらないな、お前は。』
あの時と同じだったぞ、と呆れたようにハンジに告げた。
『だってぇ〜嬉しいんだも〜ん』
床と仲良くしながら上機嫌だ。
その様子を見て、流石のエルヴィンも引いていた。
『ハンジ、変な物でも食ったか?それとも徹夜明けか?』
『たぶん、変な物でも食ったんだろう。モブリットにしっかり管理しておくように言っておく。』
ハンジの首根っこを掴み、引きずるようにリビングへと入った。
そこには予想と期待通りナナバが座っていた。思わずハンジを離してしまい、ハンジは顔面から床へ落下してしまった。
『ふぎゃっ!』
ハンジには申し訳ないがそれどころではない。俺の視線はナナバに釘付けになってしまった。
『・・・ミケ、酷い。鼻潰れちゃ・・・ぅ』
ハンジもナナバの存在に気が付いたようだ。ハンジの意識はナナバにロックオン。歓びの余り飛びつこうとした瞬間・・・
『グエッ!』
寸での所でハンジの首根っこを捕まえる。その拍子に首が締まってしまったようだ。
『ハンジ、待て。』
とりあえず、ソファに座らせナナバと距離を取らせる。一番最初に触れさせるわけにはいかない。最初は俺だ。
『ーー騒がせたな。エルヴィン、その子がストーカー被害者か?』
その子ーーリヴァイを見て問う。
『ああ。この子はリヴァイ。察しの通りストーカー被害者だ。』
その身に引き寄せるようにソファに座り、肩を抱く。そういえばあの時もリヴァイを紹介する時抱き寄せていたっけ・・・記憶がなくてもやる事は同じか。
『それよりコイツは何なんだ?イキナリ抱きついてきやがって。』
今だにエルヴィンにしがみつき警戒を解かない。やっぱり野良猫だな。
『だからってイキナリ蹴ってはダメだ。一応彼女は女性なんだから、ね?』
リヴァイに諭す。が、さりげなく失礼な事言ってないか?
『ちょっと!一応ってなによ?ってまぁどっちでもいいけどさっ』
蹴り倒されるは、首締められるは、顔面から落とされるは・・・踏んだり蹴ったりされたクセにニッコニコ笑顔。エルヴィンと一緒にいる相手がリヴァイだった事にご満悦のようだ。
『クソストーカー野郎駆逐大作戦ならいつでもオッケーだよ!そりゃあもう、全面的に協力しちゃう!』
『こいつ、信用していいのか?』
眉間に皺を寄せ不信感丸出しでリヴァイはエルヴィンを仰ぎ見る。
『ハンジはかなり変わっているけど悪い奴ではない。仕事も優秀だ。信用していい。』
ふぅん・・・っとハンジを見て『わかった』と了解した。
次に俺を見て『こいつは?』と小首を傾げる。
『彼はミケ。私の親戚兼幼馴染み兼部下だ。図体は大きいがいい奴だから安心しなさい。』
いい奴か・・・この男からは破格の評価だ。悪くない。
しかし、さっきからナナバの視線が痛い。まだ何もしてないし不信がられる事もしてないはずだか?
『この人達がリヴァイを守ってくれるの?ーーうん、大丈夫。』
俺とハンジをじぃーっと見て微笑んだ。信用するに足るか足らないか・・・逸らす事のない射抜くような新緑色の瞳はあの時と変わらない。
『ナナバの許可も下りたみたいだね。詳しい話は食事をしてからにしようか・・・』


『わ〜!リヴァイのゴハン久しぶりだね。』
本日のメニューは白身魚のピカタ、春野菜のポトフ、サーモンとアボカドのマリネである。
『うっま〜い!リヴァイ、あんたってば掃除だけじゃなくて料理まで完璧なの?マジ嫁じゃん!』
あっ・・・リヴァイの顔がみるみる紅くなる。
『っば、馬鹿やろ!嫁ってなんだよ・・・別に俺はそんな・・・』
最後はモゴモゴ・・・恥ずかしさのあまり抗議の言葉は消えてしまった。
チラリとエルヴィンを見ると幸せそうな事この上ないと緩みきった笑顔になっている。職場の人間に見せてやりたい。
リヴァイの隣に座るナナバも嬉しそうに二人を眺めている。俺と出会った時の反応からして記憶はないはずだか・・・?
ふと、ナナバと目が合った。
ニコッと笑うと俺のグラスにワインを傾けた。
『ミケさんでしたっけ?リヴァイを助けてくれるって・・・ありがとうございます。』
『ミケでいい。それに敬語もなしだ。助けるのはエルヴィンだ、俺じゃない。俺やハンジは手を貸すだけだ。』
新緑色の瞳はそれでも満足そうに微笑んでいる。
『なんでだろうね、エルヴィンを見た時に信用できるって、この人だって思ったんだ。そして、あなたもね。』
不思議だねっと笑ながらリヴァイとエルヴィンを眺める。
『リヴァイがあんなに無防備になるなんて初めて。あの子、人嫌いなトコあるから・・・潔癖魔神だし目付き悪いし口悪いし、だからあの子のテリトリーに入った人がいるって聞いて嬉しかった。』
相変わらずリヴァイを心配しているのは変わらない。俺はそれを嬉しく思う。
ふぅ・・・エルヴィンとリヴァイの事も心配だか、自分の心配もしなくてはならないな。やはり、逃がしたくない。変わらないナナバを・・・

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