侍女の災難

□対面
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「あら?…紅炎様……?」

どうしたのでしょう?

普段はまっっったく他人に興味を示さないのに、一番苦手としている女性に話しかけているなんて…。

成長したのね……!

まるで駄目な息子が成長した母親の気持ちになったみたい。

あれ?

あの人見たことないですね…。

一応この城に出入りしている人の名前と顔は一致させているのに……。

……………ああ!

そういえば、紅玉さんの話相手として一人新しくこの城に滞在している人がいました。

たしか、リートさんでしたね。

というか、見ていると完全に困っている(嫌がっている)ようなんですが…。

助け船を出したほうがいいですね。

「紅炎様、なにをなさっているのです?」

紅炎様がこちらを向く。

少し、不機嫌そうだ。

相手の女性は驚いたような顔でこちらを見たかと思うと、落ち込んだようにまとう空気が沈んだ。

私、何かしたのでしょうか…?

「…だれ?」

立ち直ったみたいで、まっすぐな目でこちらを見ていた。

「申し遅れました。紅炎様の侍女をしておりますリフィといいます。以後、お見知りおきを」

煌帝国のお辞儀をする。

本来なら、彼女の国のお辞儀をしたいのだが、彼女の出身がどこかわからないため、自国のお辞儀をした。

「あ、こちらこそ。リートといいます」

「リート様、ですね?」

「様付けなんてとんでもない!呼び捨てでよんでください!」

「しかし…」

「お願いします」

同い年ぐらいでしょうし、呼び捨てでよんだほうがよいのでしょうか…。

本人もそう言っていますし……。

「はい」

そう言うと明らかにホッとした顔をする。

そこまで露骨だと、少し傷つきますね。

まあ、それよりも………。

なんでこんなに真っ黒いオーラを出しているんでしょうね…?

後ろの紅炎様は…。

幸い、リートは気付いていないようですが…。

あー、李さんが怖がっています。

周りの方は呆れていますし…。

とりあえず、宥める為にもリートをこの場から離さないと。

「おい」

普段よりも2割増しで低い声が言った。

「紅炎様、女性に向かってその物言いは…」

「そんなことより、俺の質問に答えろ」

…紅炎様、そんなことって。

成長したかと思いましたけど、撤回します。

まっっっっったく、変わっていません!!

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