novel

□ぬいぐるみと初恋
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「美珠亜、お前のしたことは最低だ。」




わかってる。



でも、それ以外に方法が無かったから…





「お前につきあわされるのはもうごめんだ。」




待ってっ!




「俺は、黒鳥さんを傷つける人は許せない。たとえ、お前でも。」






そういって彼は、私一人を音楽室に残した。






わかってる…



私は最低だよ。



でも、それ以外に振り向いてくれる方法なんてなかったのよ。





私は事業をサボって泣き続けた。






ーガラッ


ドアがあいたと思ったら次の瞬間私は固まった。




「美珠亜ちゃん?」




なんで…!




「ちょっ、美珠亜ちゃん大丈夫ですか?!」



「く、黒鳥…さん」


「え、ないてるの?どうしたの?大丈夫?保健室行こ」



なんでそんなに心配そうな顔してるの....





「なんでって....心配だからです」



なんで、よ…



私は…


学校のみんなにあなたの悪口を言っていじめたんだよ…





なのに…







「ほら、立てる?保健室行くよ」



黒鳥さんは私のこと体を支えて廊下を歩く。





憎かった。
彼女が羨ましかった。


彼に愛されてるのに、彼女はそれをありがたくも思わない彼女が憎かった。



私と比べたら全然可愛くもない彼女のどこがいいかわからなかったけど、今わかった気がする。


「黒鳥さんって…優しいんだね。」






次の日。


私は今までの、私がしたことのおわびにカップケーキを作ってきた。



これで許してもらえるなんて思ってないわ。

それと、黒鳥さんがカップケーキが好きなのかもわからない。




でも、謝るきっかけが欲しいから。




「黒鳥さん!」

「あれ?美珠亜ちゃん」



下駄箱で上靴から履き変えようとした黒鳥さんを見かけて走り出した。



「今、帰り?」

「うん」



本当は今朝渡したかったんだけどクラス違うし、昼休みに黒鳥さんのクラスに行ったんだけどいなかったから…

「はい、き、昨日のお礼。」



「昨日のお礼?あ、別にいいのに」


となかなかカップケーキを受け取らない黒鳥さんを説得してやっと受け取って貰えた。




「ありがとう…」

照れくさそうに受け取る黒鳥さんに思わずクス笑いをしてしまった。


「あの今まで「黒鳥さん!だねぇ」」



今まで酷いことをしてごめんなさい。と言おうとしたけど言えなかった。



このアニメ声...たしか…



「あ、大形くん」


黒鳥さんが彼の名前を呼んで思い出した。



彼は確か、大形京。

ぬいぐるみといつも話す不思議な少年。



「黒鳥さん、待たせてごめんなさいだねぇ」



「いや、別に待ってないんですけど。」


待たせたって…
そういや、2人ともいつも一緒に帰ってるよね。

もしかして、付き合ってるの?

「 ち、違います!お家が隣同士なだけで!」

「そんな全力に否定しなくて....も」

私は見てしまった。

いつも可愛らしい顔でぬいぐるみと話している大形京


「さー行こうだねぇ」

「じゃあね、美珠亜ちゃん」

「う、うん。さようなら」



【ち、違います!お家が隣同士なだけで!】

その言葉を聞いてありえないほどに冷たい瞳をした彼。




彼は…麻倉くんよりも、阿修羅くんよりも…




黒鳥さんのことを…。
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