マアト・ラーの夫君たち (エジプトBL)

□守護する者達
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「えーと、僕の言っていることわかります。」
セベクから唇を離した明良は恐る恐る聞いてみた。聞いてはみたが反応はない。
目の前のこの精悍な顔つきをした爬虫類系の人は表情というものがスッポリと抜け落ちている。
『えーと、いきなりこんな事しちゃったから怒ってるのかな?』
明良はセベクの瞳の紅い光彩の奥に怒りとは違う、だがそれ以上の焔が燃え上がりつつあるのに気づかなかった。
実は明良はmouth to mouthのキスの経験は飼い猫のカトリーヌとしかなく、今回のこの人選(?)も“一番人とかけ離れて”見えたからだった。
結果、ある意味最悪の人選をしてしまった訳だが本人は全く気付くことはできなかったのだ。
で、懲りない明良は次の獲物を求めてあとの4人に視線を据えた。
明良のこの行動は異世界トリップのお約束による言語の疎通を図るための行為だった。一体いつこのような知識を手にしていたのか。いささかマニアックな方法なのだが明良は微塵も疑問を持っていない。
それどころか片っ端から試してみようとしている。

次の対象はシリスに決まったようだ。
顎割れマッチョの彼の容貌は明良が知っているどの部族のアフリカンよりどちらかというと西洋人に近い。身長は2mを僅かに超えるくらいか。それでもここにいる5人のなかで一番背が低い。

シリスに向かって伸ばそうとしていた手を誰かに掴まれた。
今の今まで微動だにしなかったセベクがその顔に凶悪な笑みを浮かべてシリスを睨んでいる。
そして明良の小さな身体を肩に担ぎ上げると威嚇するかのような低い声で「これ、貰っていくわ。」と。
「冗談じゃない‼︎」
鳥人2人が動いた。いや、動こうとした。

黒っぽい何かが視界を横切ったかと思えば次の瞬間、自分が先程まで居た寝台と共に4人が壁際まで吹っ飛んでいた。『尻尾!』
強靭な鰐の尾がセベクの後ろでゆらゆら、揺れている。
踵を返すセベクになおも追い縋ろうとした2人を先程より大きさを増した尾が今度は天井に叩きつけた。
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