マアト・ラーの夫君たち (エジプトBL)

□悪魔の恋情、死神の慕情
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煌びやかな集団がクシュの村に到着した。
どうやって集めたのか、相当な数の大型鳥人達の背に乗り、やって来た蛇族の従者達が次々と中洲に降り立つ。
そして主賓の白蛇王はデンウェンの背に乗ってやって来た。
自ら携えているのは一張の竪琴。
アポピス自身も製作に参加した、水晶から削り出した美しい品だ。
今回、アポピスは水晶で出来た品を多数持参した。
無論、鰐王に納めるものも多いがアキラ自身への贈り物もある。

アポピスは今日の日を待ち焦がれていた。


高台の広い庭に降り立ったアポピスは鰐王の出迎えを受けた。
「歓迎されぬものがやってきてしまいました。」
わざと卑下する言い方をするとセベクは、
「ああ、そうだな。」と返す。
外交団が聞いたら肝を潰しそうな会話だが、旧知の間柄の二人には何の問題もない。
「姫君は? 」
「あまりはしゃぐからテラスで待っていろと言ってある。
飛びつきでもしたら大変だからな。」
アポピスが意外そうに眉根を顰めた。
「酷いですね。
私はそんな不作法な事は致しませんよ。」
「貴殿ではない。アキラが、だ。」
セベクが心底嫌そうに言う。
「アキラには、今日蛇族の王が来る事を伝えてある。あいつは…… 」

「きゃーーーーっ‼︎ 」
喜びの歓声をあげたアキラが走って来る。
彼はアポピスの事を信頼しきって飛びついた。
腰の辺りに取り付いた腕を感じ、アポピスはゾクリとする。
「こら、アキラ。行儀の悪い奴。」
引き離そうとするセベクを尻目にアキラは上目遣いでアポピスを見上げた。
「あの……いらっしゃい。
はじめまして……じゃ、ないよね? 」
「憶えていておいでか⁈ 」
アポピスは見惚れるほどの笑みを浮かべ素早くアキラの身体を抱き上げた。
小さな臀部から膝裏にかけて腕を回し縦抱きにする。
アキラの仄かな甘い香りを堪能し、ずっとこうしたかった……夢が叶って心震わせていた。
お互いの顔が近くなり、真っ直ぐに見つめてきた子供が名乗る。
「僕、アキラです。
あの……これからよろしく…… 」


「連れて帰るって、一体何を言っているんだ‼︎ 」
アキラが着替えの為に席を外した途端、始まった激しい攻防。
セベクが激怒している。
「何も水晶宮迄と言っているのではない。砂漠の端の離宮迄でよい。
……初めてのときは……ふたりきりになりたいのだよ。」
「何を小娘みたいな事を言ってる!
ふたりきりになりたいのなら高台は人払いしてやる。
連れ出すのは絶対にならん! 」
「どしたの?大きな声出して。」
アキラが騒ぎに気づいて戻って来ていた。
スタスタとアポピスの元へいく。
アキラはごく自然にアポピスの腰に腕を回した。
「お出掛けは疲れるから今日は嫌だな。
ね?高台からは星がとても綺麗なの。
今夜は一緒に見よ? 」
にっこりと笑んで、諍いをはぐらかしてしまったアキラ。
その言葉に逆らえるはずもなく、アポピスが頷いた。


高台の広大な敷地からは、老女と必要最低限の見張りを除いてすべてのものが退去させられていた。
半分だけ蔀を下ろしたアキラの居室の張り出したテラスの端に腰掛けて、約束通り星を見ているふたり。
アポピスは砂漠の民らしく星に精通していた。
アキラに目印となる幾つかの星を教え、方角の導き方を教えた。
そして水晶宮から携えてきた贈り物を渡す。
水晶で造られた竪琴にアキラは歓声をあげた。
「僕、弦楽器は幾つか演奏した事あるけど竪琴ははじめて。
ね?どうしたらいいの?」
アポピスは膝にアキラを座らせると、後ろから抱き込むようにした。
弦を爪弾いて音階を奏でていく。

高台では柔らかな竪琴の音色と共に、優しい時間がすぎていった。


音色が止んだ。
アポピスが身体を捻じるようにしてアキラの唇を奪っていた。

触れるような口づけはすぐに激しく、情熱的になり、被さっていた口からはすぐに細く長い舌が侵食してきた。
上顎から喉奥をチロチロと刺激されて、アキラの身体は期待に震える。
アキラの上気した頬、潤んだ瞳を見て、アポピスは小さな身体を抱き上げた。
衣擦れと白銀の髪を引き摺る音だけが響き、ふたりは閨の間に姿を消した。


「うわーーーっ‼︎
ヘミペニスだー‼︎ 」
アキラは、やはりアキラだった。
色気のない事、この上ない。
蛇族特有の二本の陰茎に、只々はしゃいでいる。
毒気を抜かれたアポピスが複雑な顔をしていた。
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