2014Xmasスペシャル

□Xmasの夢
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Xmasの夢

僕の名前はケベフト。
双子の兄の名はセド。
父上はジャッカル族の長で【山犬王】と呼ばれる方だ。

僕たちは普段はアヌビスで暮らしており、父上と叔父上から勉学や武術など厳しく仕込まれている。

そんな僕たちの【一家】が集う、数少ない機会がやってきた。
年に一度のその日は誕生日と並んで大切な日……
大切な方とお会い出来る日だ。
ワクワクしていた僕は騎鷹が着陸態勢に入った事に気づくのが遅れた。

「ケベフト! 」
少し離れたところから兄上が声をかけて下さる。
「何をぼんやりしている?
振り落とされるぞ! 」
勿論そんな事は起こり得ないが……
兄上は冗談がお好きだ。

……セド兄上。
顔や身体の造りは……筋肉のつき方さえもそっくり同じだが、僕たちは根本的なところが違う。

……僕たちは……纏う色が違う。

白い歯を見せて笑っている兄上。
全身に橡色を纏い、黒光りするその姿は弟の僕から見ても惚れ惚れする。
その旋毛から生える一筋の金髪、それがアクセントになっていて、特徴的な瞳の色……孔雀色の瞳と共に兄上の代名詞となっている。
この瞳は父君である……僕にとっては叔父上にあたる【橡のアビス】殿から受け継いだ特徴だ。

対して僕は、僕の父上である【射千玉のセテフ】に似た。
生まれた時、白かった肌は成長するにつれて色づいていき、今は父上の【射千玉】に近づいている。
だが髪は……正確には体毛が金色だ。
僕が本体化した時は金毛のジャッカルとなる。


「おーーい!! 」

鰐王様の居住地【中洲】
鰐館の賓客棟に隣接する中庭に僕たちは降り立とうとしていた。
そこにはすでに、僕たちの到着を今か今かと待ちわびていた者たち。
【金鰐の6兄弟】が勢揃いしていた。

「兄上〜! 」

漸く地面を踏んだ僕たちに彼らが駆け寄ってくる。
小麦色の肌、金髪、蒼眼の彼らは僕らの父親の違う弟達だ。
父君は勿論、鰐王様。
そして有鱗種(彼らは鰐族だ)の特徴である成長の速さ。
彼らは僕たちを追い抜いてとっくに成人している。
でも彼らは、鰐王様に似た厳つい顔に笑みを浮かべて『兄上』と呼んでくれる。
僕たちよりも大きくなった体躯で抱擁してくれる……

「遅かったですね? 兄上。」
「白蛇王様はもうお着きですよ。」

何人目かに告げられた言葉に居室の方を振り返ると、噂の白蛇王アポピス様が一人の少年を伴ってテラスの階段を降りて来られるところだった。

白蛇王アポピス様。
恐らく、獣人族最強のお方。
僕たち8人は最上級の礼で以って挨拶させて頂いた。
……その背後から現れた少年。
父君にそっくりな10歳前後に見えるその子は、やはり僕たちの弟だ。
6兄弟の次の次に生まれた彼は、見た目は父君にそっくりな姿、白銀の髪、白い肌をしている。
だがその瞳だけは、父君が緋色なのに対し空の蒼を写している。
……6兄弟と同じ色だ。
そして父君に似た怜悧な美貌の中に柔らかさを孕んで……今は嬉しそうに笑っている。


不意に晴れていた空に影が差した。
大きな羽音が聞こえてくる。

……蛇竜だ!

緑色の巨大な蛇竜が中空に浮いている。
そして少し後ろにいる一回り小さな蛇竜、太陽の光を弾く金龍は、僕たちの……金鰐6兄弟に続く “ 弟 ”だ。

「兄上ーー! 」
野太い声が僕たちを呼ぶ。
二頭の蛇竜が、ヒトガタに変化しながら降りてくる。

漸く着地した蛇竜の【天空の覇者】デンウェン様……僕たちの弟の父君に礼をとった。

「そんなに畏まらなくていいよ〜
俺らが最後の到着? 」
相変わらず気さくな方だ。
「兄上方、お久しぶりです。
半年振りでしょうか? 」
巨大な体躯の彼を僕は羨望の眼差しで見つめた。

兄弟の中で一番早く成人した蛇竜の弟。
金鰐の弟達にはまだ少年っぽさが残っているが、蛇竜の彼は完全な青年だ。
蛇竜は、彼が生まれたことによってこの世に存在するのは二頭となった。


僕たちが親交を深めあっていると主屋との間を繋ぐ回廊に強大な気配を感じ、思わず振り返った。

鰐王様を先頭にテラスから降りていらっしゃる……
すぐ横にはまるで護るように僕の父上と叔父上【山犬王セテフ】と【アヌビスの軍団長アビス】がついている。
その後ろに続くのは西の砂漠の支配者【蠍王】ヘデデト様。
かの方の腕には5〜6才の小さな子供が抱かれている……彼は僕らの末の弟だ。
その金髪、蒼眼の子供が嬉しそうに手を振っている。


「ケベフト! セド! 」
鰐王様の腕に縦抱きされてこちらに向かって来られるのは……母上!!

【太陽の娘】【堕ちてきた天女】【黄金の女神】の称号を持つ……我ら兄弟の大切な母上。

鰐王様の腕から降りて、裳裾を引いて僕らの方に来られる母上のお腹が……心なしか膨らんでいる。

「は、母上? 」



To be continued……
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