2016バレンタインスペシャル

□2016バレンタインスペシャル
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早朝、衣擦れの音で目が醒めた。
気怠い身体を、寝返りをうってその音の根源に向ける。

「まだ早い……婆が起こしに来るまで寝ていればいい」

眠っていたはずの身体にビクンと電流が通る。
腰砕けの美声がアキラの快楽の元を呼び覚ます。

腹這いのまま身を捩って見上げてくるアキラの瞳の奥には、明らかに官能の色を映していて、セベクの劣情を誘う。

「今日は何か、する事があるんだろう?
これ以上愛し合うと腰が立たなくなるぞ?」

「〜〜〜!」

唸り声とも悲鳴ともつかない声を発して褥から飛び起きる。
そんなアキラが世話係の侍女を呼ぼうとするのを抑えて再び褥に押し倒した。

「気が変わった。
少しくらい良いだろう?」




アキラがその、探していたものを見つけた時、どれほど歓喜したことだろう。
現代では原産地は南アメリカとなっているその植物は小粒ながらメロエの外れの密林に自生していた。
聞けば蟲族の里奥などにも生えているらしい。

それを粉にし、砂糖やバターなどと配合を繰り返し、ようやく【チョコレート】(擬)が完成した。
今夜の宴では、集ってくれた夫全員に、彼らに対する愛とともに贈るつもりだ。


アキラはどうすれば夫たちが喜んでくれるか、その無駄に良すぎる頭で一生懸命考えた。
そしてその良すぎる頭はとんでもないアイデアを導き出して……今に至る。
つねに常人の斜め上をいくアキラの今回の案は、それなりの騒動を引き起こすのだが……



「温度調節が難しいんだな〜
直前まで湯煎しとかないと固まってしまう……」

甘い香りが立ち込める厨房で、アキラは大鍋いっぱいのチョコレートと格闘していた。
後ろに控える侍女たちが、先ほどから口々に『時間が……』とか『準備が……』とか、煩い。
仕方なく、チョコレート作りを手伝ってくれた料理人と湯煎の準備をし、色々な設定を説明して自室に戻っていった。


いつものように湯浴みから始まって、髪を乾かし、整え、今日は香油は髪にちょっぴりにしてもらった。
隅々まで磨き上げられた身体に薄衣を纏う。
宴に出るにはいつもより魅惑的な薄物に侍女たちは揃って瞳を輝かせる。
今夜は、装飾品は最低限。
彼女らは今宵の余興の中身を知っている。



筆頭夫君セベクの、開催の挨拶で宴は始まった。
アキラ企画の今回の宴、数日前から何やらゴソゴソと企んでいるようだが、所詮はアキラ。
大した事はしないだろうとタカを括っていたのだが、結局は度肝を抜かれ、最終的には非常に満足した。

今宵集まったのは名目上の彼らを含む、総勢16名の夫たち。
ちなみにマヘスは欠席だ。

存分に振舞われた酒、料理。
宴用の広間にはほろ酔いの雰囲気が漂い、皆上機嫌だった。

「えーっと、皆、ちょっとごめん」

アキラの少し緊張した声に、注目が集まる。

「今日は、女性が男性に愛を告げ、贈り物をする日です。
僕は女性じゃないけど、皆の奥さん?だから……えーっと、僕自身を贈ります」

夫たちの注目の中、宣言と同時に侍女たちが温めた壺を数個持って現れる。
皆が呆気にとられる中、素早く衣を脱ぎ捨て全裸になったアキラの、その白い肩に壺の中身がゆっくりと掛けられていった。
茶色く、甘い香りを漂わせるそれ……

「舐めて……?」


「わかってるんだろうな?
16人、全員満足させないと治らないぞ」

怖い、怖い顔をしたセベクに凄まれて、アキラはコテンと頭を傾げる。

「……舐めるだけ?」

「馬鹿、そんな訳あるか!」

これは少々、考えが足りなかったかと及び腰になった時、背骨の肩甲骨のあたりから首筋まで、甘いおののきが走った。

「女神さま……美味しゅうございます。
出来うれば、湯浴みなどせずにおられるあなたを……舐めたかった」

変態チックな言葉を、事もあろうにネフェルテムから受けて、アキラは衝撃のあまり絶句する。

「私はここが良いな」

セテフが手ずから壺を傾け、チョコレートを流したのはアキラの大切な場所……花芯だ。

あっという間に転がされ、両の乳輪に取り付いたのはアポピスとデンウェンだ。

「ヤダーっ! やめてーっ!!」

「始めたのはおまえだろう?」

そう耳許で囁かれ、吐息が吹きかけられてわななく瞬間、一気に突き込んできたのは勿論セベクだ。
衝撃と、そののちの甘い痺れ。
アキラは己のなかでさらに勢いを増すセベク自身に溺れる。
そしてその頃には、さながら獲物にむしゃぶりつく獣のような夫たちに貪られていた。





受けがたったひとりの酒池肉林は夜が明けても続き、浅慮だったアキラは数日寝込みましたとさ。

めでたし、めでたし……




「めでたくないよーーっ!!」



end

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