アキラの誕生日2016

□アキラのお誕生日2016
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エーヴァ=カーリナ・インドレニウス=ザレヴスキ公爵令嬢。
ヨーロッパ社交界の女王、大輪の薔薇のような佳人と表されるこの女人は、たった一人の子息の事で頭を悩ましていた。

アキラ・インドレニウス=ザレヴスキ
長らく行方不明だった彼が大怪我を負って発見されてから早3ヶ月。
怪我は順調に治癒し、退院してパリのエーヴァの館に戻ってきて以降……笑顔を見せない。

幼少の頃より、母エーヴァの幼い頃を写したような可憐な【少年】だったアキラ。
ティーンエイジャーになる頃でもその可愛らしさは損なわれず、相も変わらず女子にしか見えなかった。

そのアキラが行方不明になり、発見されたとき、見る人が見ればわかる……アキラにはそこはかとない色気があった。
それはたっぷりと愛でられた、女人の持つ色気だった。


「アキラ……少し、よろしくて?」

「お母様?もちろん!どうぞ」

アキラは膝にあったNPを閉じてテーブルに置いた。
エーヴァは執事に紅茶を持ってくるように言って、アキラの傍に腰を下ろした。

「どう?具合は。
あまり食が進まないと聞いているわ……
やはりわたくし、少し休暇をとって一緒にいた方が良いかしら?」

「大丈夫ですよ、お母様。
第一、お母様は財団のお仕事でお忙しいでしょう?」

エーヴァはうふふ、と笑った。
どう見ても、アキラのような成人した子息がいるようには見えない。

「では、母様のお願いを聞いてくれるかしら。
あるパーティなのだけど……ぜひ、あなたに出席して欲しいのよ」

「財団絡みですか?
それなら……わかりました」

「ありがとう。
あなたも楽しめてよ」

エーヴァが意味ありげに微笑んでいた。



パーティが開かれるその日、昼下がりのひとときをネットサーフィンして過ごしていると、エーヴァからメッセージが入った。

『すぐにいらっしゃい』

簡潔に一言。
アキラは溜息を吐いて立ち上がった。


パーティなんか行きたくない。
……愛するものたちから引き離され、現代でひとり……生きている。

「もう、限界かな」

アキラはポツリと呟いた。



エーヴァの私室のドアをノックし、内側から開けられた部屋の中を見て、アキラは自分が嵌められた事を理解した。

あの母が何の策もなく出席を打診してくるなどありえなかった筈だ。

「お母様、これは一体……」






財団のパーティなどと適当な事を言って、本当は自分のバースデーパーティだと聞かされて、今アキラは会場で困惑していた。
母はきっと、元気のないアキラを励まそうと考えたのだろう。
その気持ちはありがたい……だが。

ありえないだろう。
エーヴァの部屋に用意されていたのは
【ドレス】だった。



デビュタントも催されるそのホテルを、社交シーズンの真っ只中、よくぞ押えられたなと感心する。
そして今更ながらに母親の持つ影響力に驚きを隠せない。
それは今夜、ここに集っている面子にも表れているのだが、アキラは気づいてしまっていた。

『これってお見合いパーティじゃん!?
それもお相手は【男】お母様何考えてるの?』

白の、体の線を強調した細身のドレスはアキラに良く似合っている。
どことなく、あの世界で着ていた正装の衣に似ていて、僅かに微笑んで生地を撫でた。



この続きは本日中にUPします。
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