戦神のセオリー

□66666ヒットキリ番リクエスト ー蜜月ー
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私の腕の中で眠る、愛しいラー。
今回の小旅行の為にアヌビス館へやって来たラーに、欲望を抑える事が出来なかった。
久しぶりに再会したラーを組み敷いて抱く。
まだ、外は明るい時刻だというのに、これ
ほどラーに飢えていたのか、と思うほど貪った。


「セティ……セティ……! 」
デンウェンの手の中から現れたラーを、両手を広げて受け止め、抱き締める。
抱き合って唇を重ねているふたりを尻目にデンウェンは身を翻して飛んで行ってしまった。
ラーからの感謝の言葉も別れの挨拶も無しに。
無理もない。
愛するものを他の男の元に届けるなど、私なら耐えられない……


サプライズはアヌビスの民へのラーのお披露目。
旅に疲れた身体を清め、衣を着付ける。
花嫁衣装は中洲から取り寄せた。
悔しいがラーの衣に関してはあそこの女達の右に出るものはいない。
今回の衣は閲兵式の時より一段と凝っている。
昼間は中洲よりも暑いアヌビスの事を考えてだろうが、今回の衣は私の忍耐を削いでいく。
クシュでは、二枚重ねの下の衣は普通の衣で(セテフにはそう見えたが、実は違う。)今回のは透けて見える。
上に重ねてギリギリ、見えるかどうか。
陽に照らされると肢体のシルエットが浮かびあがる。
これを計算して製作しただろう鰐人の女達、賞賛に値するが……相変わらずその執念には恐れ入る。
女は怖い。
透けた衣からラーの身体を見られる事が少々気に入らなかったが……
花嫁衣装のラーは美しかった。

館の上階のバルコニーからアヌビスの民にお披露目をする。
姿を現した瞬間、大歓声に包まれてラーは戸惑っていたが、すぐに笑顔となり皆に手を振って見せた。
アヌビスの民は見ただろう。
唯一無二の私の番を。
黒と金の、最高の対を。
黄金の天女を得た私を。


「セティ……すき。」
閨の間で絡み合う身体。
明日の事がある為抱くつもりはなかったのに、顔を見た途端この有様だ。
私はこれほど節操のない男だっただろうか?
ラーが私を狂わせる。


焼けつく太陽に肌を焼かれないように、ラーの身体に慎重に薄布が巻かれた。
「何処いくの? 」
不安げに見上げてくる顔……
ああ……食べてしまいたいくらい可愛い。

私は一瞬で黒獣に、大ジャッカルに変化した。
「うわー!セティ凄い‼︎
どうしたの? ね、どうしたの? 」
館のものが手早く私の背に鞍を乗せた。
腹側で縛り、脇にナイフや水筒簡単な食べ物などを詰めていく。
平時であればこのようなことは絶対にしないが、ラーを乗せて走るのは、この私の特権だ。
誰にも譲らない……

「早く乗りなさい、ラー。」
「いいの? 」
ラーは伏せの姿勢をとった私の背におずおずと、しかししっかりと乗って来た。
鞍の側面に足を掛ける場所を見つけて、私の背を内股で挟んできた。
「手綱は……鬣を掴んでいいの?
痛くない?」
「ああ、大丈夫だ。」
思ったよりも、ラーは獣の背に乗る事に慣れているようだ。
助かる……と思ったが、次の瞬間猛烈な嫉妬心に襲われた。
「ラーは誰かの背に乗った事があるのか?」
私の心などを終ぞ知らずにラーは無邪気な声をあげる。
「僕、乗馬は得意だよ。
お爺様のところに僕の馬が居るの。」
ほ〜ぉ、その【馬】とやらにラーは乗っておったのか……気に入らん。
ラーが騎乗してよいのは私だけだ。
ああ、腹が立つ‼︎

不意にラーの手が私の鬣を撫でた。
甘えるように私の首に纏わり付いてくる。
その唇が私に触れる。
「セティの背に乗せて貰えるなんて、僕嬉しい。」
気分が高揚する。
「ああ、私も嬉しいぞ。
そろそろ行こうか? 」
薄暗かった空は日出を迎えた。


濃褐色の土の道から黄土色の砂の道へ。
一頭の黒獣が駆ける。

途中、何カ所かで休憩(私はなんともないが、慣れぬだろうラーの為。)して(無論前夜のうちに天幕を張って飲食物の他簡易寝台まで用意してある。ラーの為だ。当たり前だろう。)目的の場所に辿り着いたのは夕刻に近かった。
巨大な砂丘のその先には……

「うわぁーー‼︎ 」
ラーの歓声があがる。
これが聞きたくて、喜ぶのが見たくてここまで来た。

真青な大海原。
ラーの瞳の色にも少し似ている。
「前に来たいと言っていただろう? 」
「セティありがとう! 」
ヒトガタに戻った私にラーは抱きついてきた。
膝を折って華奢な身体を受け止めて、私達は唇を重ねる。

強く、強く抱き締めて……


早朝の海岸で、私達は日出を待っていた。
海からの冷たい風からラーを護る為に毛布でしっかりと包んでいる。

水平線に一本の金色の線が走り、世界が輝く。
黄金の太陽がゆっくりと登って来る中、私はラーに口づけた。
ラーの舌が私の咥内を舐める。
ラーからの無言の礼……


ー蜜月ー
 

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