青嵐候のおたわむれ

□青嵐候のおたわむれ
1ページ/1ページ


僕はいつからここにいたのだろう。
ものごころついたときにはすでに彼の側にいた。
僕は人だけど眷属の人たちは優しくしてくれる。彼らによるとここは人の住む世界ではないのだという。
『あなた様は主様の特別なのですよ。』と。

ひらひらと舞い落ちる薄紅色の花びらの中、青銀の大妖はこちらに向かって駆けてくる少年を見て目を細める。
「玉(ぎょく)!」
立ち上がって伸ばした両腕に飛び込んできた人の子を抱きしめてその名を呼んだ。
「早蕨!お帰りなさい。」
我の名を呼ぶたった一人のもの。
愛しの妻〈さい〉。
頤を持ち上げて上を向かせると腰を折って口づけた。
そのまま腰を降ろし膝の上に座らせるとしっかりと抱き込む。
旋毛に口づけを落とし、繊首の薫りを嗅いで長い舌で嘗めあげた。
“ぴくり’’と震える様が可愛くて愛しくて。
「さ、早蕨ぃ…」潤んだ黒い瞳が見上げている。
「ふふ…誘っているのか?」
九尾狐は鋭い爪の生えた獣の指を人のそれに変え、人の子の身八つ口からするりと滑り込ませた。
桃色の突起を探りあて襟元を寛げようとする。
「あっ…さ…わら…」
吐息混じりの囁きにとんでもなく煽られて、自分の身体が熱くなるのを感じた。


その時、見知った気配を感じて己の九本の尾で人の子の身体を包み込んだ。「相変わらず独占欲丸出しですね。青嵐候。」
「挨拶もなしか?蟇。」
背筋の凍るような眼差しを向けられて''蟇”と呼ばれた客人は退散して行く。
彼の者の気配が完全に消えたのを確認するとするりと尾をほどいた。
「無粋な。」
早蕨の機嫌と共に急降下していた気温が遂に氷点下に達したのだろう、ぴしぴしと凍りつく音がそこかしこから聞こえる。
人の子は早蕨の首に腕を回し抱きついて囁いた。
「早蕨 僕、寒いよ…」
顔をあげ早蕨と目を合わせて、
「暖めて?」と。
潤んだ目を伏せ、頬は薔薇色に上気させて早蕨の胸元の毛に顔を埋めぎゅっと抱きついた。
『ズクン』
獣の血が沸騰する。

閨に運ばれた時にはもう、帯はほどかれ何枚も重ねられた着物は腕から抜かれていた。
襦袢が片肩に引っかかっているのみ。
早蕨はもともとはだけられていた直衣を引きちぎって身体から外した。
華奢な身体に覆い被さり一気に貫く。
「きゃぁぁぁーーーっ‼︎」
玉の悲鳴は苦痛からのものではなく快楽故の。
その花芯からは白蜜を止めどなく溢し蜜穴の中の早蕨を奥へと呑み込もうとする。
激しく揺さぶられ、脳が焼かれるような快感にひくひくと身体を麻痺させて喘ぐ。
「さ…わら…び…もぉ…かんにん…」
涙目の玉の懇願など意に介さぬ早蕨の行為はますます激しく…

虚ろな目で我を見上げる玉。
絡めた指に力を込める事も叶わず、嫌々をして涙を溢す。
何度も何度も穿ち、精を注ぎ込んだ蜜壺はトロトロに蕩けて我を包み込み締めつける。
ああ、堪らない。
今宵はもう離してやれないかもしれない。
玉、玉よ。
我の名を呼んでおくれ。


翌日、いつになく上機嫌な青嵐候と、とうとう夕方近くまで起きられなかった玉の姿があった。


end

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ