銀魂

□特別な日
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誕生日とは素晴らしい日だと思う。

自分がこの世に生まれたことも勿論だが、神楽にはまだ難しい。

それよりも、目立つのが周りの態度。

いつもより我が儘が通る。

いつもは貰えないようなプレゼントを貰える(主にすこんぶだが)。

夕食は好きなものにしてもらえるし、量も多い。

主役にとって、これほど気持ちのいいものはないと思う。




「つーことで、すこんぶ寄越せヨ」

「いや話がみえねぇよ。何で俺がてめーに物やんなきゃならねーんでぃ」

「物じゃないアル。すこんぶアル。食べ物ネ。
誕生日なんだからくれヨ」

「旦那とか新八くんにでも頼みなせぇ」

「これ以上頼むと万事屋が破産するアル」

もうすでに銀時と新八からは貰っている。少量だが。

貰う時、これ以上は無理だからと釘をさされたのだ。

「足りないならお金いっぱい持ってる人に貰え言われたアル。お前金有り余ってるんだろ税金泥棒。神楽様にすこんぶ献上するヨロシ」

「そのすこんぶへの拘りはなんだよ。
……しょうがねぇなぁ。分かったよ、買ってやるぜぃ」

え?と目を見張った。

まさか本当に貰えるとは思っていなかったのだ。

何を企んでいるのかと沖田を見ると、誕生日だしな、と呟いて歩き出していた。

どうやら本当にくれるらしい。

駄菓子屋へ歩いていく沖田を慌てて追いかけ、どれくらいくれるのだろうと、期待に胸を膨らませた。




「で、どれだけ欲しいんでぃ」

「あるだけ全部アル」

「……お前は遠慮って言葉知らねぇのかよ」

「そんな言葉、私の辞書にはないネ」

「書いとけ」

そう言いながらも駄菓子屋へと入っていった沖田に、これは本当に全部くれるかもしれないと思った。

何故か今日の沖田はいつもと違う。

皆も神楽に甘くなっていたが、それとは少し違う。甘さはない。

なんと言うか、優しいのだ。

やはり、誕生日と言う日は偉大なのか。

そうこう考えているうちに、沖田が店から出てきた。

「ほらよ」と赤い箱が二つ投げ渡された。

………二つ?


「おいコラ。これしかなかったアルか。もっとあったダロ。私はあるだけって言ったんだヨ」

「うっせぇな。これもやるから黙りやがれ」

と、さらに何か小さいものが投げられた。

キャッチして正体を確かめると、それは兎のキャラクターの小物。

何だこれは、と頭をひねっているのを見た沖田がバカにしたようにふっと笑った。

………ムカつく。


「髪飾り」

「かみかざり、ってツッキーとかがしてるかんざしとかアルか?
でもこれ小さいヨ。髪括れないアル」

「最近ガキの間で流行ってるんだと。確か、へあぴん、とか言うやつ。髪の一部を止めるもんでさぁ
お前もたまにはそういうの着けたらどうでィ」

つまり、アクセサリー。

何だかこそばゆくなって、少し視線を反らした。

「な、何かお前今日キモいアル。お前が優しいとか明日雨降るネ」

「誕生日なんだろ?俺もガキの頃…いや、今もか。周りに甘やかしてもらったんでねィ。
それに、誕生日はちゃんと祝ってやれって言われてるんでィ」

「ふーん」

誰に、とは言わない。この間銀時から少し聞いてしまったから。お姉さんがいたと。

今はそれに触れるべきではない、と、そっと、掌の中のヘアピンを見てみた。

ピンク色の、目がくりくりした兎がピンの先端についている。

こういうものは初めて貰ったかもしれない。

「えっと、ありがと、アル」

「気に入ったか?」

「うん」

「そうか、それ対象年齢六、七歳だぜィ」

「……ン!?」

神楽は今、十四歳である。

何だか騙された気がしてきた。

「…ぶっ、変な顔」

「ーー死ねェェェ!!!」

神楽が振り上げた傘を沖田は軽く避け、そのまま少し遠くへ移動した。

「何でェ、気に入ったんならいいじゃねーか」

「それはそうだけど、ぐぬぬぬ………」

悔しがる神楽を楽しそうに見る沖田に軽く殺意がわく。

沖田はにやりと人の悪い笑みを浮かべ、神楽に背を向け歩き出した。

「じゃーなぁチャイナ。誕生日おめでとうさん」

ひらひらと手を振る沖田にべっ、と舌を出して威嚇した。沖田は見ていないのだけど。


それから、またちらりとヘアピンを見た。

このヘアピンを気に入ったのは本当だ。

ただ、子供用というのが悔しい。

というか沖田に趣味が子供だと思われたのがムカつく。


「……絶対着けてやらないアル」


押し入れに大事にしまってるのは、秘密。

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