過去と未来と今

□☆一目惚れ
1ページ/2ページ

あれは真田と俺の2人で一緒に帰っていたときのこと…
新入生が数日前に入ってきたから、俺達も先輩になるんだねとかそんな話しをしてたような気がする。

「ここの桜も、もう少しで散るのかな…」
「そうだな」

2人で桜並木を歩いていた。
散りかけの桜が風に舞い綺麗だった。
そんな時頭上から声がした。

「こっちにおいで」

と。
ふと見上げると女の子が枝にしがみついていた。

「えっ!?」

隣に歩いていた真田もつられて上を見た。
すると

「そこのお前!なにしている!」

と怒鳴った。
真田のその声に女の子はびっくりして一瞬手を離した―
あぶない!!
そう思った瞬間にその子は再び枝を掴んだ。

「えっ!?いや…えっと…ネコが……」

その子の視線の先には子猫がいた。
枝の先でニャーと鳴いている。
その子は少しずつ子猫に近付いていく。
なぜか目が離せなかった。

「お…おいで…」

そう言ってその子は子猫を捕まえた…
しかし、その瞬間…
子猫が女の子の事を引っかき枝から飛び降りて逃げていき
その子はバランスを崩して落ちてきた……

「あっ!」

そして俺の両腕に重みがかかった。
とっさに体が動いてその子をキャッチした。
その子は目を閉じている。
しばらく見ているとその子はゆっくり瞼を開けた。
俺の目とその子の目が合う…
一瞬だったんだろうが、長い間目があっていたように感じた。

「えっ!?えっと…」
「大丈夫?痛くない?」
「えっと……は、はい」
「よかった」

少しずつその子の顔が赤くなっていった。
今の状態を理解したのかな?
俺はこの子を今お姫様だっこしているからな

「えっと……お、下ろしてくれ…ませんか?」
「あっ、わかった。」

ゆっくりその子を下ろした。
正面から見ると……同じ部活の丸井に似ている気がする。

「その制服は立海生だな!1年生か!」

隣にいた真田が怒鳴った。
照れていた表情から、今にも泣きそうになった。

「真田、そんなに怒鳴ったらかわいそうだよ」
「しかしだな…」
「す…すいません……ごめんなさい!ありがとうございます!!」

その子は、俺達にお辞儀をした。
そして木に立てかけていたバッグを拾うと走って逃げていった。
くまのキーホルダーがついていて小さく鈴の音がした。

「なんだあいつは!幸村、腕は大丈夫か?」
「ああ。軽かったからなんともないよ」

俺達はしばらくその子の後姿を見ていた。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ