立海

□虹と桜
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それはあれから数年経った日の事…
その日は朝から雨が降っていた。
俺は病室にいた。
入院しているわけじゃない、華菜のお見舞い。
あの時入院していた、幸村部長は退院して元気になっている。
でも華菜は、病院で眠ったまま。
華菜というのは、昔俺の事トコトコついてきていた女子の名前。
あれら2年はお見舞いに来ても、病室に入れてくれなかった。
当たり前だけど…
でもしつこかったのか、分からないけどある日入っていいと言われた。
だから俺はここにいる。

「まだ雨降ってるぜ。華菜も雨ばかりはいやだろ?」

反応はないけど話しかけた。
数日に1度来てはいろいろ話しかけたり、個室だったので、音楽かけたり…
昔はよくいた華菜の両親とは、もう全然会わない。
看護師さんが来るのは、俺と華菜の兄くらいとか言っていた気がする。

「そういえば、幸村部長があと数日でコスモスが咲きそうとか言ってたな。」

そんな事を言いながらベッドの横にある丸椅子に座った。
もう部長じゃないのに、幸村部長と呼んでしまう。
そんな事を思って、ちらっとベッドの横の棚を見た。
そこには華菜の家族写真と俺が昔持ってきたキーホルダーが置いてある。
埃をかぶっていないので、定期的に掃除してんだな。

「そうだ!桜好きなんだろ?来年連れて行ってやるから起きろよ」

そう言って華菜の手を握った。
そして窓を見るとさっきまで降っていた、雨がやんでいて、遠くに虹ができている。

「綺麗な虹が出てるぜ。このままおき……え?」

華菜が目を開けた。
勢いよく立ち上がり、座っていた丸椅子が倒れた。
華菜の顔を覗き込むと、誰?みたいな感じで俺の事を見ている。

「起き……たのか?」

瞬きしている。
その後は一瞬のことのようだった。
ナースコールおして、医者が来て、しばらくしてから華菜の兄も来て……







俺は車椅子を押しながら、桜並木を歩いていた。
少し離れたところには、華菜の兄がいる。
前科(病室で暴れた事)あるから、2人っきりにしたくないとか言ってついてきた。

「桜、綺麗だな」

俺がそう言うと、華菜は微笑んだ。
もし、話せるようになったら、沢山話ししたいなと思いながら桜並木を歩いた。

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