氷帝
□騙された大賞
1ページ/1ページ
岳人は華菜のこと好きなんか?」
「はぁ?好きじゃないし。」
と俺は言ったものの、本当は華菜のことが好きだ。
でも、なかなか正直に言えない。
「なら、華菜は俺がもらうな。」
「勝手にしろ。華菜が、侑士の彼女になろうが、俺には関係ないからな。」
―放課後―
「岳人きいてや〜」
侑士がすっごくうれしそうに走ってきた。
「なんだ侑士?」
「俺な、華菜と付き合うことになったんや!」
「えっ!」
嘘だろ…
華菜が侑士と…付き合う?
「岳人、言っとったやろ。勝手にしろって。せやから昼休みに告白したんや、そしたらな…岳人どうしたんや?」
侑士がこう言ってきた。
俺の目から涙が落ちていた。
「なんでもない!」
「もしかして、華菜のこと好きやったんか?」
「ちげーよ!目にゴミが入ったんだ!」
そう言って俺は走った。
どこに行くかはきめてなかったけど。
気付いたらある桜の木のしたにいた。
ここは俺が華菜と初めて会った場所。
そして、木の下で泣いた。
初めての恋は失恋で終わった。
次の日―
俺は学校に行けなかった。
というより、行きたくなかった。
数日後―
やっと立ち直った。
……ってわけじゃないが、親に学校に行け!って追い出された。
学校への道を一人で歩く。
「向日さん!」
後ろから日吉の声がして俺は振り返った。
日吉が走ってきた。
「なんのようだ!」
「怖いですよ。そういえば、華菜さんが、心配してましたよ。」
「華菜は侑士の彼女だろ。なんで、俺の心配なんか……」
「向日さん華菜さんのこと好きですよね?」
「好きじゃねーよ。」
好きだが、もう今更……な
「俺なら、ダメもとでも告白しますよ。それで、ダメならその人に下剋上するだけです。」
下剋上か……
俺は侑士に下剋上出来ないだろうな。
「日吉はいいよな、下剋上って言えてさ……」
「向日さんの取り柄はプラス思考じゃないんですか?まぁ、何事もやってみないとわからないんですよ。」
日吉はそれだけ言うと走っていった。
プラス思考か…
なんか、あの日以降マイナス思考だからな…
でも、プラス思考になる気分じゃない。
放課後―
華菜は侑士と話している。
日吉に言われ、華菜と侑士のところに歩いていった。
「がっくん。体調はもう大丈夫?」
「あぁ……」
なんか気まずい。
侑士がこっちを見ている。
「よかった。心配してたんだよ。」
「別に心配しないでいいんだけど。」
「えっ…でも…」
華菜は困ったような表情をした。
…なに言ってんだ俺。
「侑士、俺はお前に下剋上するからな!」
「岳人、自分はいつから日吉になったんや?」
「……とにかく!侑士から、華菜をとってみせるからな!」
大声で言った。
テニスコートにいた人達から見られる。
侑士はなぜかクラッカーをだして、ひもをひいた。
パァァン!
クラッカーの音が響く。
「やっと言えたな、岳人。」
「はぁ?」
「岳人、華菜のこと好きなんに、全然告白せんから…」
「ちょっとまて!どういうことだ?」
「華菜は、岳人のこと好きなんやで。…あっ、言ってしもうた。」
俺は侑士から華菜に視線をずらした。
華菜の顔は赤くなっている。
えっ…なんで?
よくわからなくなってきた。
「どういうことだ?」
「華菜、早く答え言ってあげや。」
俺を無視して、侑士は華菜にはなしかけた。
「今の告白なの?」
「そうやな。岳人やり直せ。」「なにを?」
「告白を。」
えっ……意味が理解できない。
「岳人、華菜に告白しや。」
侑士は華菜と付き合ってないのか?
侑士は早くしろ!と目で言っている。
「俺は…華菜のこと好きだけどよ…華菜は…侑士のこと好きなんじゃ…」
「あれは、嘘や。」
「あっ…そう。」
理解ができたような、できないような。
告白すればいいのか?
「俺は華菜のことが好きだ。」
「私もがっくんのことが好き。」
華菜は俺に抱き着いた。
こうして、俺の初恋は成功に終わった。
にしても、ビックリするようなことするなよ!