氷帝

□騙された大賞
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岳人は華菜のこと好きなんか?」
「はぁ?好きじゃないし。」

と俺は言ったものの、本当は華菜のことが好きだ。
でも、なかなか正直に言えない。

「なら、華菜は俺がもらうな。」
「勝手にしろ。華菜が、侑士の彼女になろうが、俺には関係ないからな。」

―放課後―

「岳人きいてや〜」

侑士がすっごくうれしそうに走ってきた。

「なんだ侑士?」
「俺な、華菜と付き合うことになったんや!」
「えっ!」

嘘だろ…
華菜が侑士と…付き合う?

「岳人、言っとったやろ。勝手にしろって。せやから昼休みに告白したんや、そしたらな…岳人どうしたんや?」

侑士がこう言ってきた。
俺の目から涙が落ちていた。

「なんでもない!」
「もしかして、華菜のこと好きやったんか?」
「ちげーよ!目にゴミが入ったんだ!」

そう言って俺は走った。
どこに行くかはきめてなかったけど。

気付いたらある桜の木のしたにいた。
ここは俺が華菜と初めて会った場所。
そして、木の下で泣いた。
初めての恋は失恋で終わった。
次の日―

俺は学校に行けなかった。
というより、行きたくなかった。

数日後―

やっと立ち直った。
……ってわけじゃないが、親に学校に行け!って追い出された。
学校への道を一人で歩く。

「向日さん!」

後ろから日吉の声がして俺は振り返った。
日吉が走ってきた。

「なんのようだ!」
「怖いですよ。そういえば、華菜さんが、心配してましたよ。」
「華菜は侑士の彼女だろ。なんで、俺の心配なんか……」
「向日さん華菜さんのこと好きですよね?」
「好きじゃねーよ。」

好きだが、もう今更……な

「俺なら、ダメもとでも告白しますよ。それで、ダメならその人に下剋上するだけです。」

下剋上か……
俺は侑士に下剋上出来ないだろうな。

「日吉はいいよな、下剋上って言えてさ……」
「向日さんの取り柄はプラス思考じゃないんですか?まぁ、何事もやってみないとわからないんですよ。」

日吉はそれだけ言うと走っていった。
プラス思考か…
なんか、あの日以降マイナス思考だからな…
でも、プラス思考になる気分じゃない。
放課後―

華菜は侑士と話している。
日吉に言われ、華菜と侑士のところに歩いていった。

「がっくん。体調はもう大丈夫?」
「あぁ……」

なんか気まずい。
侑士がこっちを見ている。

「よかった。心配してたんだよ。」
「別に心配しないでいいんだけど。」
「えっ…でも…」

華菜は困ったような表情をした。
…なに言ってんだ俺。

「侑士、俺はお前に下剋上するからな!」
「岳人、自分はいつから日吉になったんや?」
「……とにかく!侑士から、華菜をとってみせるからな!」

大声で言った。
テニスコートにいた人達から見られる。
侑士はなぜかクラッカーをだして、ひもをひいた。

パァァン!

クラッカーの音が響く。

「やっと言えたな、岳人。」
「はぁ?」
「岳人、華菜のこと好きなんに、全然告白せんから…」
「ちょっとまて!どういうことだ?」
「華菜は、岳人のこと好きなんやで。…あっ、言ってしもうた。」

俺は侑士から華菜に視線をずらした。
華菜の顔は赤くなっている。
えっ…なんで?
よくわからなくなってきた。

「どういうことだ?」
「華菜、早く答え言ってあげや。」

俺を無視して、侑士は華菜にはなしかけた。

「今の告白なの?」
「そうやな。岳人やり直せ。」「なにを?」
「告白を。」

えっ……意味が理解できない。

「岳人、華菜に告白しや。」

侑士は華菜と付き合ってないのか?
侑士は早くしろ!と目で言っている。

「俺は…華菜のこと好きだけどよ…華菜は…侑士のこと好きなんじゃ…」
「あれは、嘘や。」
「あっ…そう。」

理解ができたような、できないような。
告白すればいいのか?

「俺は華菜のことが好きだ。」
「私もがっくんのことが好き。」

華菜は俺に抱き着いた。

こうして、俺の初恋は成功に終わった。

にしても、ビックリするようなことするなよ!
 

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