□最後のたこ焼き
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「さっきの白石からの電話ってワイがもう死んでるって話なんやろ」
「えっ!?なんで分かったの?」
「ホンマのことやから」

というと金ちゃんは下を見た。

「なに言ってるの?金ちゃんはここにいるでしょ。私の目の前で…ちゃんと触れられるんだよ」

金ちゃんの肩に触っても透ける事は無いし、温かさもある。

「ね?白石部長が変なこと吹き込んだんだね…よしよし」

華菜は金ちゃんの頭をなでた。
やっぱり感触もあるし、温かさもある。

「ねーちゃんありがとう。ワイねーちゃんとの約束守れて嬉しかった」

と言うと華菜の顔を見た。
その顔はいつものようにかわいい笑顔を浮かべていた。
でもすぐに目がウルウルと涙ぐみ始めた。

「あの日、ワイはねーちゃんに早く会いたかったんや…ねーちゃんに早く会いたくてワイは周りを見ていなかったんや」

そして金ちゃんは語り始めた。
2ヵ月前のことを…
周りを見ていなかった金ちゃんが交差点でトラックと衝突し
大量の血が流れて行く中で華菜の顔を思い出していたこと
気づいたら宙にふわふわと浮いていたこと

「周りを見てなかったワイが悪いんや…オカンがまだずっと泣いててな…」

金ちゃんの目からは涙が落ちていた。

「金ちゃん…」

ギュッと金ちゃんのことを抱きしめた。

「ねーちゃんに一つだけお願いしてもええ?」
「うん」
「ワイのオカンにもう泣かないでって伝えて欲しいんや」
「うん…」
「それと…ねーちゃんに」

モゾモゾと華菜の腕から抜けると小さい紙袋を出した。

「2ヶ月遅れてしまったけど…ねーちゃんへの誕生日プレゼントや。ワイがお小遣い貯めて買ったんやで」

紙袋を受け取り中身を見た。
中身は華菜がずっと欲しかったうさぎのキーホルダー。

「あ…ありがとう」

華菜の目から涙が溢れた。
目の前にいる金ちゃんの姿がどんどんボヤけていく…

「ワイ、ねーちゃんが大好きやった。ワイの分も長生きしてな。約束やで」

それが金ちゃんの声を聞いた最後の時だった。
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