葵のブックカフェ

□cherry
1ページ/1ページ

【人物紹介】
遥華{はるか}
主人公

桃香{ももか}
遥華の友達

和斗{かなと}
遥華の好きな人

巳波{みなみ}
遥華の友達

【桜ノ雨】
『遥華?』

私を呼び止めた桃香。

凄い心配そうな顔して私の右腕をギュッっと掴んでいた。

『痛い…』

それでも桃香は私の腕を離さない。

『あんたなんにも知らないの?』

私より肝がしっかりしてて曲がってることにはいつだっておかしいって。

変だって言えるしっかりとした女の子。

男子からはモテモテでフラれたことのない人。

私とは大違い。

あんたなんにも…って。

私確かに鈍感だよ。

でも何にも知らないわけないじゃん。

和斗の彼女なんだよ?

もう何ヶ月もの時間を一緒に過ごしてる。

いくら鈍感でも何ヶ月もいたら分かるよ。

わかりたく無いことも。

『なんのこと?』

苦笑いだな…って自分でも気づいてたよ。

でも気づきたくない事実だったから私は惚けた。

『和斗くん彼女いるんだよ?
あんた、なんで何にも怒んないの!?』

そんな険しい顔しないでよ。

友達なのに酷いよ。

いまそんなこと言わなくったって。

わかってる。

よくないよ。そんなこと…

和斗に私は怒らなくちゃいけない。

でもフラれるのが怖いから言えないよ。

『そんなわけないじゃん』

すっと桃香の握ってた右手をスッと抜いて教室まで歩いて行った。

和斗が誰かに取られるなんて嫌だよ。

だから2番目でもいいからこうやって繋ぎ止めてるんだよ。

1番被害者みたいな顔してんの桃香の方じゃん。

私知ってるんだよ?

桃香も…

和斗と色んな関係持ってるんでしょ?

それは私が手を伸ばしても届かない関係までも。

私はクラスまで戻った。

私の左隣は和斗の席。

『あのさ…』

いいよね。

和斗は。

っというかもう無駄にしないでいいよ。

和斗の大事な時間私のために無駄にして欲しくない。

だって私のことなんにもわかってないじゃん。

なにがあんなに優しかった和斗を変えてしまったんだろ…

それは私自身なのかもしれない。

もしそうなら…

もう死んじゃった方が楽になれる…。

桃香も和斗も気づいてない。

心配してるふりをしてるだけ。

気づいてないでしょ?

私の右手首の夥しい傷の跡。

『おれ別れたいんだよね!』

…えっ?

『俺、桃香と昨日やったの!
それでさぁ
あいつの方が可愛いんだよね!』

なにそれ?

なんで?

またフラれた…の?

『聞いてんの?』

凄い険しい顔した和斗。

えっ…ウソ…聞こえない。

『おい、聞いてんのかよ!』

何で怒ってるの?

『ブス!』

ブス…って言った?

なんで…なにも聞こえなくなった。

桜色の頬を淡いピンクの雫が落ちる。

私はまた満面の笑みを作ってバイバイって手をふった。

和斗への大好きな気持ちが零れた。

私はなにももたないで走った。

靴だけ履き替えて。

外の景色は涙色の空だった。

【SIDE】
窓からふと外を眺めてた。

少し退屈な3時間目終わりの休み時間。

15分の休み時間。

小雨が静かに降り出した。

そう言えば降水確率は40%だっけ?

昇降口から誰かが走り出してくるのが見えた。

ローファー履いて傘もささずに。

それは俺の好きな人によく似てた。

もしかしたらと思って俺はクラスメイトに傘を1本借りて走り出した。

『…華』

息切れがして言葉が思うように声が出ない。

漸く追いついて右腕を掴んだ。

俺の好きな人はビクッとして立ち止まった。

ストレートな髪になって俯いたまま。

『どうしたんだよ!』

なにも答えない俺の好きな人。

遥華。

遥華は携帯を取り出してピコピコ何かを打ち出した。

「聞こえないの。」

泣きながら無理に笑顔なんか作ったりして。

首を激しく横に降って。

俺がしつこく追いかけるもんだから来ないでよ!って腕を叩かれた。

口パクでわかったよ。

来ないで?

ほっといて?

ほっとけるとか思ってんの?

こんな可愛くていまにも崩れそうで震えててどうやってほっとくんだよ。

俺は無理やり好きな人を背負って家まで連れて帰った。

白い紙とボールペンを渡した。

何があった?

なにもない。

なにもなくない。

フラれちゃったよ(笑)
ブスだって。わかってるよ。

そんなことない

ある

ない

ある。

和斗の彼女の話?

うん…。

和斗の彼女がどうかした?
遥華じゃないの?

桃香に取られちゃったよ。
あんたそれでいいのって今日言われたのね?
あんたそれでいいの?って聞かれていいよって言うの
待ってたんだろうね?
待ってて和斗を取ろうとしたんだろうね?

やっほーい(笑)

ひどい…

彼女は書くペンを置いて俯いた。

それで携帯で最低💀って言われてしまった。

だって、俺好きなんだよ?



嘘じゃない。

遥華はまた苦しそうに泣き出した。

大粒の雨を大きな音立てて泣いた。

嘘じゃないの?って。

嘘じゃないよって優しく抱きしめた。

でもごめんね?

って携帯で。

なんで謝るの?

また始まった文字での会話。

まだすきになれないよ。

いいよ、それでも。
まだ和斗のこと好きでしょ?

うん

いいよ、それで。

ふふって遥華が声をあげて笑った。

この笑顔が俺、たまらなく好きなんだよね。

【桜色】

あれから3ヶ月経って漸く彼氏彼女らしくなってきた。

和斗とは違って巳波はすごい甘えたさんで少し調子は狂うけど甘えられる存在。

私にもだいぶ笑顔が戻って巳波も私が笑うたびに笑った。

桃香とは友達じゃなくなった。

桃香は和斗を手にいれたけど桃香から友達はいなくなって虐めの標的になってた。

助けたいのに。

巳波はそうはさせない。

だって桃香の事虐めてるの巳波だから…。

俺、巳波は漸く遥華を手にいれた。

遥華の見てた涙色の景色は消えて桜色の景色が戻った。

『遥華!』

振り向くと巳波が満面の笑みで手をふってた。

次の授業は移動クラス。

私の左隣は巳波。

前は和斗と桃香。

私はどう言う顔して過ごしたらいいんだろう?

『遥華あったかぁい!』

まだ少し冷たい春の風。

巳波は私に抱きついた。

寒いなら扉を閉めればいいのに。

それからしばらくして巳波が離れた。

私は巳波に目をやると寝息を立てて静かに寝てた。

巳波の声が聞こえなくなると和斗と桃香がたらし女とか色々言ってくる。

どうして私がこんな目に合わなきゃいけないの?

裏切ったのは和斗なのに。

傷つけられましたみたいな顔しないでよ。

『ハ…ル…』

寝言で私の名前を呼ぶ。

私はこの人のために2人分の板書を取る。

多分巳波は起きてる。

妬かせようってしてるんだ。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ