感謝(頂/贈)

□シンリン様よりブロケビ
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路地裏を歩く二人を息を殺しながら後をつける。

先に歩くブロッケンの後ろについていく感じでケビンが続いているようだ、そこで腕を組むなり手を繋げば雰囲気も出るだろうに…。

(大丈夫だぞ、周辺に人は居ない…さぁ一思いにガバッと。)

そんな私の思いとは裏腹に二人は大通りへと向かって行く。
愛想をつかすのではないかと心配をしていたが、ブロッケンの後をついていくケビンから見えない尻尾がブンブンと左右に揺れているのが見えるから歩くだけで喜んでいるのだろう。
例えるならケビンマスクは大型犬のような…男だとしみじみ思った。

手を繋ぐ事無く、特に障害が無いままが向かった先は、私と同じ超人委員会が用意したホテル。

(ああ、着替えるんだな。)

流石に部屋の中までストーキングは出来ない、諦めて私も着替えることになったのだ。




待ちに待ったイベント、メインストリートは沢山の仮装で溢れている。

そのいっかくで、メイン会場で仮装の参加者向けの注意事項が発表され長々しいお偉いさんの挨拶が終われば待ちに待ったハロウィン祭りの始まりである。

参加者のうち招待された超人は夕方まで強制だかそのあとは各自自由にしていい。

私はホッケーマスクを被りチェーンソーを片手に町を歩く、回りには魔女や骸骨、リアルなゾンビが各々町を歩き写真撮影に協力したり一般人を驚かしたりしている。

私が仮装した物は昔見たホラー映画のキャラ、そう…ジェイソンだ。

適当に奇声を上げながら、あの超人二人を探す。

(…っと、その前にもうひとつ。)

「そこの、マスクを被った…吸血鬼?達、写真いいか?」

私が声をかけたのは、キン肉マスクが特徴的な吸血鬼に扮した甥っ子の万太郎とその友達…確かガゼルマンとキッドだったか。

「ひぃー、ジェイソンだ僕ちんこわいー!」
「落ち着け万太郎。」
「HEY!かまわないぜ。」

懐から取り出した高感度カメラで三人を撮影する。
万太郎は怯えているようだが気にしてはいられない、確りと写しておかなくては。

「ぼ、僕もう行っていい?」
「まて…此方のカメラで、もう一枚あと下からも。」

「なぁ、この体の鍛え方…只の超人じゃないよな?」
「…。」

「もしかして、万太郎の…」
「男はあまり自分の考えをベラベラ言うものじゃない。」
「…探索は止そうぜキッド。」
「ことが好きなホモ…、あ…ああ。」


「ガゼル、キッド!早く行こうよーボインのお姉さんが待ってるよ。」
「あ、わかったいま行くぜ!」

(相変わらずな…万太郎の写真…っと、まったくスグルの親バカも大概にして欲しいものだ。)

去っていく三人組を眺め、弟に頼まれたお目当ての人物を写真に収めれば今日の任務は終了したも同然だ。

さて、例のカップルを探そうと回りを見渡せば。

(あれは…お揃いのカボチャで顔を隠しているがあれは間違いない。)

ジャック・オ・ランタンと言うべきか、一般人に成り済ましているが体はごまかせていない。

相変わらず手を繋がないで二人歩いている所に、知らない女性が丁度話しかけてきた。

「写真いいですか?」

「ああ、よしポーズをとれ。」

「なぁ…ブロ、仮装に慣れてるな。」

「生まれてから…長いからな。」

「あの弟子といったこともあるんだろうか…。」

「ない…昔は、いや気にするな。」

「あ、あぁ。」

「ただ…お前の思っているようなことはない。」

「そうか…そうだな。」

「大丈夫か、さっきから人にぶつかりそうになっているぞ?」

「仕方ないだろ、カボチャの中はマスクをがぶった俺がいて視界は狭いし。しかも暑くて息苦しいとか、ブロが新鮮なお化けカボチャを朝ジャックオランタンにくり抜いたお陰で、とっても臭うとかな!」

「そうか大変だな、俺のは匂わないぞ?」

「他人事みたいに言いやがって…当たり前だ、そっちは三日前にくりぬいて確り中を乾燥させていた事くらい知っている。水分を飛ばしたから軽いだろうし。」

「そもそも俺は吸血鬼をしたくて牙まで生やしたのに…。
絶世の美男子ケビンが夜に向かうは、レジェンドブロッケンJr.って、くっそー絵になると思っていたのに。」

「諦めろ、顔を出したら石を投げられるんだろ。」

「バレなきゃ大丈夫大丈夫。ダディも二ヶ月くらい出したまま寝てたけど何もないし。」

「…はぁ。がばがばな家系だな。」

「がばがば?ダディのは知りたくないが俺の尻はきつきつだろ?」

「…そっちじゃない。」


「ふぅ、相変わらずブロはつれないけど…俺に付き合えって言われて二人で歩く事になるとは。これはデートなのか?デートだな外を自由に歩けるデートを計画してくれんだな、あぁ、前にブロの手がこれは掴めか?掴みたい腕を組みたい。」

「おい、全部声に出てるぞ。音がこもって回りには聞こえないが…静かにしてろ。ほらっ。」

「いやー、俺の手をブロが繋いで。」

「…そんなに嫌なら俺一人で回る。」

「離さないでくれ、違うんだ待ってくれブロ!くそっ誰かが俺の邪魔をしている!」

(ああ…あのカボチャ、ドアを通れる大きさじゃないだろ…)

何やら手を繋いだと思ったら離されて何やら揉め始めている。
一回りカボチャの小さなブロッケンは店へ通れたが、ケビンはドアを破壊しそうな勢いでカボチャを引っかけ進めないようだ。

「ふっ…助けてやろう。」

私はケビンに向かってチェーンソーを振り上げた。

「Thank you!」

辺りにカボチャの破片を撒きながらも無事に通れるようになった彼が風のように走り去って行く。

「頑張りな。」

(ふっ、兄さんは愛の味方さ。)


後は颯爽と私も立ち去れば完璧、そう思ったのに目の前に立ちはだかる祭りの警備員。

「もしもし、イベント会場内での刃物の使用は禁止ですよ。ちょっと運営まで来なさい。」

「…人助けだ。」

「決まりは決まりですから。」

結局警備員に連行された私は本部で説教を受けるはめになり、さらに超人委員会や勢揃いしたキン肉族が居て逃げ出せず、関係者への挨拶、写真撮影の応対をしているうちに夕方になってしまった。
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