BLEACH短編
□夫婦の契り
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柑奈は、白哉がいなくなったのを確認すると、布団に横たわる緋真の隣に腰を落とす。
「それで…お話とは………?」
「柑奈様は…私のこと、お嫌いでしょう?」
「何を言って…!?」
緋真の問いかけに、柑奈は動揺を隠せなかった。
確かに、恋敵である緋真のことを「憎い」と、「妬ましい」と思ったことは幾度もある。
愛する人を横取りされても憎まずにいられるほど、柑奈の心に余裕はない。
かといって、それが「嫌い」に繋がるのかと言えば、またそれは別の話なのではないか?
「嫌い………ではないです」
「………柑奈さ」
「でも…憎いと思ったことはあります」
「…ごめんなさ、い」
そう言って緋真は、優しく微笑む。
微笑んでると言えど、その表情はどこか儚さを感じた。
「どうして…? どうして謝るの?」
「………あなたの愛する人を横取りしてしまったから…」
緋真の言葉に、柑奈の中でぷつっと何かが切れる音がした。
「そうよ…。貴方さえいなかったらあの人の心は、私のものだった!」
緋真に対してこんなことを言ったって、ただの八つ当たりにしかならないことくらい分かっている。
それでも柑奈は、溢れる気持ちを抑えることは出来なくなっていた。
まるで、コップから零れる水のように。