BLEACH短編

□紫ヒヤシンスの花言葉
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「分かったから…で、何か用事?」
「今日はお前も一緒に…」
「あー…ごめんなさい。私今日は用事があるの」

白哉の言葉にわざと被せるように発した言葉。
それはただ単に、白哉が言わんとすることを断るための口実に過ぎない。

「用事…?」
「そうなの。だからごめんなさい」

恐らく白哉が言おうとしていたことは、「緋真」のことに違いない。
今日は緋真の命日。
白哉は緋真の命日には毎年欠かさず墓参りに行っているのだ。
だから今日もきっと、墓参りにいくつもりで柑奈を誘ったのだろう。
緋真が亡くなってから50年。
柑奈が白哉と一緒に緋真の墓参りに行くことは一度たりともなかった。

「そうか…」
「ごめんなさい…」

白哉は踵を返し、ゆっくりと歩き始めた。
柑奈から2、3歩離れたところで後ろから聞こえたバサバサ、という紙が落ちる音。
振り返った白哉の瞳に映ったのは、散らばった書類の中で倒れている柑奈の姿。

「柑奈!!!」

倒れた柑奈の姿はまるで緋真のようで。
白哉はすっと血の気が引いていくのを感じた。
柑奈を抱えてみれば、腕に感じる重みは思った以上に軽い。
緋真が最後に残した言葉がふと頭をよぎる。

「もう…失わぬ」

自分自身に言い聞かせるように呟いて、白哉は柑奈を抱えて四番隊へと向かった。

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