BLEACH短編
□紫ヒヤシンスの花言葉
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「んっ…」
視界に広がるのは無機質な白い天井。
鼻をくすぐるのはつんとした薬のにおい。
柑奈は、ゆっくりと体を起こした。
「ここ…は?」
「目が覚めたようですね?」
「卯の花隊長…ここは?」
「ここは救護施設です。あなたが倒れたと、朽木隊長が血相を変えて運んでこられたんです」
「く、ちき隊長…が?」
理想の旦那さんですね、と卯の花は微笑んで柑奈のお腹にそっと手を当てた。
「無理をするな、と言いましたよね…?」
「うっ…」
「それと、まだ伝えてないようですね?」
「あ、あははは…」
乾いた笑いをする柑奈に、卯の花は深いため息をついた。
「ねぇ、卯の花隊長…。本当にいいんでしょうか、私…」
幸せになっても、と柑奈は悲しげな表情を浮かべながら呟いた。
いつも、自分を後回しにして他人を優先する柑奈。
そんな柑奈の悲しげなその表情に、卯の花は柑奈を優しく抱きしめた。
「卯の花、たいちょ…?」
「先ほどまで…朽木隊長はあなたが目を覚ますのを見守っていたのですよ」
「えっ…?」
「私の妻を助けてくれ。もう大切なものを失いたくない。そう言って頭を下げたのですよ」
あのプライドの高い白哉が頭を下げた。
それは妻である柑奈ですら信じがたい話。
しかし、卯の花が嘘をつくとは思えないから、本当の話なのだろう。
「あなたは朽木隊長に愛し愛されて、幸せになるべきです」