BLEACH短編

□猫にも負けぬ
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とても立派な塀に止まった2羽の小鳥のさえずりが、規則正しい寝息を立てている少女、柑奈に朝を迎えたことを知らせる。
少女、とはいってもそれは外見の話であって、実際はこれでも長生きしている方である。
小鳥のさえずりに一唸りして目を開けると、隣で一緒に寝ていたはずのこの家の当主であり、柑奈の夫である朽木白哉の姿はなかった。
気を使って起こさなかったのだろう。
不器用なその優しさに、自然と笑みがこぼれる。
柑奈は庭の方へ足を進め、未だ塀に止まっている2羽の小鳥へ「おはよう」と挨拶をした。
小鳥達もそれに反応するかのように一鳴きし、空へ羽ばたいて行った。
その様子をぼんやり見つめていると、鈴の音が響き渡る。

「あら、千ヶ崎。おはよう」

鈴の音を鳴らしながら歩いて来たのは、白い毛並みで少し短い尻尾が特徴の猫。
少しばかり目つきの悪い千ヶ崎と呼ばれたその猫は、常に無表情な夫の白哉にそっくりだ。
そして千ヶ崎は、縁側に座る柑奈の膝に飛び乗り丸くなる。

「あらあら、甘えるなんて珍しいわね?」

そんなことを言いながらも千ヶ崎の背中をそっと撫でる。
撫でられるのがそんなに気持ちがよいのか、千ヶ崎はゴロゴロと喉を鳴らした。

「ふふ、可愛らしいこと」

しばらく千ヶ崎の背中を撫でていれば、今度は遠くの方からニャー、と鳴き声が聞こえる。
鳴き声のした方へ目を向ければ、そこには千ヶ崎よりも少し身体が小さく、つぶらな瞳をした猫が佇んでいた。

「お前もおいで、芹」

柑奈が、芹と呼ばれた猫に向かい手招きをすると、芹は嬉しげに駆け寄って来る。

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