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□克服するより頼ってよ
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「僕、天ぷらが好きなんだ」

食事中、マツバさんがテレビに映された天ぷらを見て言う

『そうなんですか……』

私はマツバさんにつられて天ぷらを眺める

少し見た後、止めていた手を再び動かしてご飯を口に運ぶ

『……(天ぷらか……)』

大好きなマツバさんのために天ぷらを作りたいが料理をしたことがない私がいきなり天ぷらを作るなんて無理な話だ

そう思っていたら突然

「どうしたの?ナマエちゃん」

マツバさんが私の顔を覗き込んでいた

『へ?あ、いえ……』

と言ったらそう?ならいいけど……と言ってマツバさんは再びご飯を食べ始めた










次の日、私は天ぷら作りに挑戦しようとして材料を買いにコガネシティまで来ていた

天ぷらといえばやはりエビ

私はエビをかごに入れて他の材料を探しにいく

その途中……

「あ、ナマエやん」

アカネちゃんと出会った

『こんにちは、アカネちゃん』

「エビ……今日のご飯?」

アカネちゃんが私が持っていたかごの中を覗いて言う

『うん、天ぷらだよ』

「天ぷらかぁ〜ウチも好きやで……マツバのためなん?」

アカネちゃんはニヤニヤしてそう言った

図星をつかれて私は少し照れてしまった

『う、うん……』

「マツバも幸せやな〜自分の好きな料理を作ってもらえるなんて」

普通作るだろ、と心のなかで思ったがあえて言わないことにした

「にしてもナマエの料理って絶対美味いやんな?またウチにも頂戴や」

料理をしたことがない私に何を言うか

そう言いたかったがアカネちゃんが目を輝かせてこちらを見ていた

うん、この目は期待の目だ。ガッカリさせたくない

そう思って……

『じゃあ上手くできたらあげるね』

「ほんま!?うれしい!!ありがとな!!」

アカネちゃんに負けてしまった……

アカネちゃんはその場でぴょんぴょん跳ねていた

付き合っていたら長くなりそうなので私はアカネちゃんにまた今度、と言って買い物を進める










家に帰ったら誰もいなかった

当然だよね……マツバさん、今日はジム戦があるって言ってたし……

私は持っていた買い物袋と相棒のムックルに持たせた買い物袋をキッチンに置いた

『マツバさんが帰ってくるまで作れるかな……』

時計をみれば5時、あと1時間でマツバさんが帰ってくる

『やるしかないか……』

私はエプロンをキュッと結んで天ぷらを作り始めた










『……』

只今私はフライ鍋とにらめっこ中

火を使うのが怖くてこの状態

エビに粉をつけるまではよしとしてこれからが問題

温度は?時間は?どれぐらいがちょうどいいの?本当にサクサクになる?焦げない?

変な不安が出てくる

ムックルがレシピの本見ろよと言いたそうな目線でこちらを見ている

私はその目線に気づいてなかった

『えーっと……これで……』

「クルッ!!」

『うわっ!?』

箸でエビをつかんでまま動こうとしない私の肩にムックルは突然乗ってきた

ジューッ

『あーっ!!』

ビックリしてしまい、つかんでいたエビをポロリとフライ鍋の中に入ってしまった

『あ、あ、あ、どどどどどどどーしよ!?これってあの……どのくらいがいいのですか?』

ムックルに聞いてもわからないのに私はムックルに聞く

しかも敬語で

ムックルはクル?と首を傾げて此方を見ていた

くそっ……可愛いやつめ……

そんなこんなで慌てていると

「ただいま〜」

マツバさんが帰ってきたのだ

『うえぇ!?マ、マツバさん!?』

マツバさんの帰りに驚いていると足元にゲンガーが来ていた

「ゲン?」

ゲンガーはキッチンの上に置いてあった天ぷらの材料を不思議そうに見る

お前も可愛いやつめ……

「ゲンガー、どうしたの?」

そのゲンガーの行動に反応してマツバさんはキッチンに来た

やばっ……天ぷら作ってることバレる!!

知られたくない私はマツバさんの目の前まで来て、天ぷらを見えないようにする

『マツバさん!!もうすぐご飯出来るので待っていてくれませんか!?』

「そうなの?なら僕も手伝う……」

『大丈夫です!!私一人で出来ますから!!』

「そう?ならリビングで待ってるね」

マツバさんは無理しちゃダメだよ?と言いながら頭を撫でてリビングに向かった

『……』

マツバさん……優しすぎますよ……

マツバさんの行動に固まっていた私にムックルは私の頭をつつく

『ちょ、痛い!!せっかく撫でてくれたのにつつかないでよ……』

ムックルはクルッ!!と言って、戻っていく

『よしっ……やるか……』

と気合いを入れて戻ったところ

『あーっ!!』

フライ鍋を見ると真っ黒なエビ

『火を消すの忘れていた……』

私はその場でorzの形になる

『でもまだ残っているんだ!!チャンスはある!!』

私は残りのエビを使って、調理をした
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