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□行かないで
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気付けば目の前には真っ白な天井。
私はベットで横になっていることに気付く。
……今のは……夢だったの?
夢でも……夢でも、どうしてあんな夢を見るの?
クロウ先輩がいなくなる……夢
ボーッとしていると右手に暖かい感覚が伝わってきた。
そちらに目を向けると誰かに手を握られていた。
少し視線を動かすと太陽に照らされながら綺麗に輝く銀髪。
そして赤い目……。
夢の中で必死に呼び掛けていた彼、クロウ先輩がいた。
「目が覚めたか?」
『クロウ……先輩……。』
「お前びっくりしたよー……いきなり戦闘後に倒れるんだから……。」
『戦闘?……倒れた……。』
「あれ?覚えてねぇか?手配書の魔物、結構厄介な相手でさ、やっと倒せたーって思ったらいきなり倒れて……。」
『あ……。』
「ハハ、思い出したか?ま、無事でなによりだ。」
そう言って微笑みながら私の頭を優しく撫でてくれる彼。
さっき夢でみた悲しそうな顔をしていたのが嘘のように……。
「じゃあ、俺はリィンたちにお前が起きたって言いに行くな。」
立ち上がった彼に、私は反射的に腰に抱きついた。
どこかに行ってしまいそうで……
もう一生会えなくなりそうで……
クロウ先輩が私を置いて行きそうで……
そして……クロウ先輩が一人でいなくなりそうで……
「ナマエ?」
『クロウ先輩……どこにも行かないでください。』
「?大丈夫だって、リィンたちに報告すればすぐに……」
『行かないで!……クロウ先輩がいなくなりそうで……怖くて……』
自然と私の目から涙が出てきた。
「……どうした?何があった?」
クロウ先輩は少ししゃがんで私と目線を合わす。
その目を見ると、真剣な目をしていて……
でも、どこか悲しい色をしている目……
『……さっき夢を見たんです。クロウ先輩がいなくなる夢……。』
クロウ先輩は一瞬目を見開いたが、すぐに私を落ち着かせるように笑顔になり、私を優しく抱き締める。
「大丈夫、俺はナマエを置いて行かない。」
『ほん、とうに……ですか?』
「あぁ、必ず……だから心配するな。」
『……はい。』
返事はできたもののまだ心の中では不安がたまっている。
正夢になりそうで……
顔を上げてクロウ先輩を見ると一瞬、悲しい顔をしたのを私は見逃さなかった。
その悲しい顔は夢の中で見た彼の悲しい顔とそっくりで……
どうしていいのかわからなかった。
どうして……どうしてそんな悲しい顔をするの?
本当にいなくなっちゃうの?
私の側から離れてしまうの?
行かないで……クロウ先輩……