short2

□行かないで
2ページ/3ページ


気付けば目の前には真っ白な天井。

私はベットで横になっていることに気付く。

……今のは……夢だったの?

夢でも……夢でも、どうしてあんな夢を見るの?

クロウ先輩がいなくなる……夢

ボーッとしていると右手に暖かい感覚が伝わってきた。

そちらに目を向けると誰かに手を握られていた。

少し視線を動かすと太陽に照らされながら綺麗に輝く銀髪。

そして赤い目……。

夢の中で必死に呼び掛けていた彼、クロウ先輩がいた。


「目が覚めたか?」

『クロウ……先輩……。』

「お前びっくりしたよー……いきなり戦闘後に倒れるんだから……。」

『戦闘?……倒れた……。』

「あれ?覚えてねぇか?手配書の魔物、結構厄介な相手でさ、やっと倒せたーって思ったらいきなり倒れて……。」

『あ……。』

「ハハ、思い出したか?ま、無事でなによりだ。」


そう言って微笑みながら私の頭を優しく撫でてくれる彼。

さっき夢でみた悲しそうな顔をしていたのが嘘のように……。


「じゃあ、俺はリィンたちにお前が起きたって言いに行くな。」


立ち上がった彼に、私は反射的に腰に抱きついた。

どこかに行ってしまいそうで……

もう一生会えなくなりそうで……

クロウ先輩が私を置いて行きそうで……

そして……クロウ先輩が一人でいなくなりそうで……


「ナマエ?」

『クロウ先輩……どこにも行かないでください。』

「?大丈夫だって、リィンたちに報告すればすぐに……」

『行かないで!……クロウ先輩がいなくなりそうで……怖くて……』


自然と私の目から涙が出てきた。


「……どうした?何があった?」


クロウ先輩は少ししゃがんで私と目線を合わす。

その目を見ると、真剣な目をしていて……

でも、どこか悲しい色をしている目……


『……さっき夢を見たんです。クロウ先輩がいなくなる夢……。』


クロウ先輩は一瞬目を見開いたが、すぐに私を落ち着かせるように笑顔になり、私を優しく抱き締める。


「大丈夫、俺はナマエを置いて行かない。」

『ほん、とうに……ですか?』

「あぁ、必ず……だから心配するな。」

『……はい。』


返事はできたもののまだ心の中では不安がたまっている。

正夢になりそうで……

顔を上げてクロウ先輩を見ると一瞬、悲しい顔をしたのを私は見逃さなかった。

その悲しい顔は夢の中で見た彼の悲しい顔とそっくりで……

どうしていいのかわからなかった。

どうして……どうしてそんな悲しい顔をするの?

本当にいなくなっちゃうの?

私の側から離れてしまうの?

行かないで……クロウ先輩……
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ