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□俺と声が出ない彼女1【伊月俊】
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今日はクラスで席替え。
今まで日向と隣だった俺は今の席が好きだ。
正直席替えなんてしなくてもいいと思っていた。
そう考えているうちに俺の番が回ってきた。
クジを引いて番号を見ると、さっき見せてもらった日向とは遠いようだ。
しかも一番後ろのはしっこ。
運が悪ければ喋る相手がいないのかもしれない。
色々考えながら席に戻ると日向が話しかけてきた。
「なんだ伊月、嫌そうな顔して。」
「いや、日向とは離れてしまうなと、思ってさ。」
「番号は?」
「この番号さ。」
俺はさっき引いたクジを日向に見せる。
日向は“こりゃ、遠いなー。”と言って自分の番号と交互に見る。
すると“伊月いーなー!その席サボれるじゃん!”と元気な声が聞こえた。
声からするとコガ……小金井だ。
「サボれるって……俺はサボるつもりないけど?」
「だったら俺と交換しよーよ!」
「ダメだ。お前、教卓の前だろ?」
「え、なんで知ってんの!?」
「さっき大声で言ってたじゃないか。なぁ水戸部?」
「(コクコク」
「ちぇーっ、つまんねーの。」
コガはしぶしぶ自分の席に戻っていった。水戸部は相変わらずおどおどしているが……。
そして席替えする時がやってきた。
クラスの皆は机に入っている教科書や筆箱、横にかけている鞄を持って席に移動し始めた。
「じゃあな、伊月。」
日向はそう言って自分の席の方にいった。
俺も荷物の整理をしてその席に座る。