目は口ほどに物を言う
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アジトとは反対方向の街の空き地、シャルナークは一人瓦礫に座って不服そうな顔をしていた。
彼はこの街で、物心ついた頃から大人を信用せずに生きてきた。
ある時は金を騙し取られ、ある時は食料を理不尽な暴力で奪われ、最低限のマナーすらも守らないこの街で辟易と呆然と瞳をギラつかせて生きてきた。
信じられるのは自分と仲間だけ、そうやって今までもこれからも生きてきた。
そんな中突然現れたウキヨゼロザキと名乗る謎の人物。
見た目は己と同じ程の少年にしか見えないウキヨはあっという間に仲間達に馴染みだしていた。
何より自分が心を許そうとしていることが理解できない。
本能がウキヨを慕おうとしている、残された理性が信じられないでいる。
何よりこの人は大丈夫だ≠ニいう漠然とした何の根拠も無い言葉がふと飛び出しそうになるのが気持ち悪かった。
「────気持ち悪い」
ふるりと肩を震わせた時、低俗な声がかけられた。
「僕〜?どうしたのかなァ?」
シャルナークは自分を叱咤した。
少し仲間達から離れようと、出来るだけ離れようとしていたせいでこういう輩がいることをすっかり失念していた。
「何でもない!」
「肩を震わせて、可哀想にね〜
一晩だけ、俺とどう?」
寄るなと睨みつけるがこの男は少ししつこく、なかなか離れていかない。
思考が纏まらない、ぐちゃぐちゃする…。
シャルナークは悲鳴を上げるように叫ぼうと瓦礫から立ち上がり、
「良い加減に──!」
──びしゃ
「…え、?」
シャルナークの瞳は限界まで見開かれた。
何が起きたのかを脳が必死で理解しようとする。
自分の手にはガラス片、男の首には深い傷と出血。
「オレが、やった?」
まるで何の感慨も抱かず、まるで呼吸をするように、あくまで自然に。
そこに罪悪感は存在しない、悪意も存在しない、殺意すらも抱いていない、それが何だとばかりの行為。
シャルナークの心に浮かんだのは狂喜でもなければ恐怖でも罪悪感でもなく…………
「へぇ、これは凄いモンだね」
シャルナークは背後からの声に俊敏に反応しガラス片を声の主に向けて、そして止められた。