目は口ほどに物を言う
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さて。
あれやこれやが色々あって、知識─もといシャル以外のメンバーも僕に信頼を寄せ始め、お互いにあだ名や略称で呼び合うまでになり。
今日の流星街は珍しく粉塵の霞の少ない澄んだ日だった。
「ちょっとウキヨ兄ぃ、いつまで寝てんのー?」
零崎の殺人衝動を僕の魔術で抑え込んだ知識が僕を起こしにやってきた。
窓の外は既に日が昇っていて、もうお昼過ぎであることを示していた。
ああ因みに、あれから度々二人でアジトを抜け出しては僕の魔術で人気のない場所へ移動して、こっそりと知識の零崎流戦闘センスを鍛えていたりする。
「うーーー…、しるしきぃー後もう五分…」
「ホラ、寝ぼけてないで!早く起きて!」
薄っぺらくてボロボロのブランケットを引っぺがされた僕は、部屋をさっさと出て行った知識を尻目に寒さにふるると震えた。
「う、くぅううう…寒…」
そうそう。
ついこないだ自分が魔術師だってことを皆に告白したのですが、それぞれの反応がなかなか面白かったんだよねぇ…
思考回路が大人な方に入るクロロとパクは流星街に捨てられるモノの中にたまにそういうのがいるからとあまり驚かず、ウボォー•ノブナガ•フィンの脳筋トリオは冗談だと思い何故か爆笑、フェイ•フラン•マチは目を瞬かせて僕を残念な物を見るような目で見、事情を知る知識は爆笑していた。
「おはよー…ああ寒い…
昨日までの暖かさどこに行ったんだよ…」
僕がぶつくさと文句を垂れながらアジトの広場に出てくると、数人から朝の挨拶やら苦笑やらが返ってくる。
適当な瓦礫に腰を落ち着けて、僕はポケットから携帯を取り出した。
こっちの世界では僕の携帯は圏外になっていて使えなかった為、急遽改造した僕の今のこの携帯は現在流星街の議会のジジィ共のアドレスしか入っていない。
…ええ。
流星街の、すこぶる治安が悪いこの辺りの代表職を押し付けられましたよ。
まぁここらの治安に辟易してたところだからいいんだけどさぁ…。
「ウキヨ兄ぃなんかあった?」
「うにー?」
「いや、眉間にシワよってるからさ」
知識に指摘されたので僕は自分の眉間を指で撫でつけた。
「ホント、参っちゃうよねぇ…ケホ」
「……ウキヨ兄ぃ、何か顔赤くない?」
「うー?
寒暖差もあったし、最近やっと環境に身体が慣れてきたみたいだし、それでちょっと身体が油断して風邪引いたんだよ、多分」
「流星街に来たての時って体調悪化させやすいんだから気をつけてよね!」
「わかってるって心配性だなぁ、シャルは」
「ウキヨ兄ぃって割と自分のことに無関心だから見ててハラハラするんだよ…」
おや、弟に心配掛けちゃダメだね。
「ウキヨ兄ぃ、やっばり寝てる?」
「とりあえず他の地区みたいにルールを作ってそれ議会のジジィ共に送ったら寝るよ
おーいクロロぉ!」
僕が名前を呼ぶと、部屋の隅で新しく拾った本を読むクロロが視線を上げた。
「今日の食料調達当番クロロ達だったよね?
僕今日は行けそうにないからこれ渡しとくよ」
僕からそれ≠受け取ったクロロが首を傾げる。
「ウキヨ、何これ?」
石ころみたいだけど≠ニ言外に添えられたその質問に僕は咳混じりに説明する。
「ケホ、スタンガンの効果を付属したその辺の石ころだよ
黒っぽいところを絡んできたバカの太ももくらいの心臓から離れた場所に押し付けて心の中ででも口に出してもいいからバチンって言うかしてくれたら発動するから」
「威力あるの?」
「一般の成人男性が一日と半日は神経麻痺で動けなくなるくらいの威力はある」
「なら良いや、上々だね
ありがたく使わせてもらうよウキヨ」
それを懐にしまうクロロを確認して、僕は再びルール作りの作業に戻った。