目は口ほどに物を言う

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僕がルールを何とか考え終えてジジィ共に向けて送信ボタンを押した所でクロロが返ってきて、僕がグッと背伸びをするとまた咳が出て若干噎せた。

「ゲホゲホッケホ
 ──よし寝よう、割と本格的に風邪引いたかなコリャ…」

僕が自分の部屋にすごすごと戻ろうとすると、クロロと一緒に帰ってきたパクがあら?と口に出す。

「ん、どしたのパク」

「マチ知らない?」

「え?マチ?そういえばクロロが出た時くらいから見てないな…」

僕が聞くと、パクはマチちゃんを知らないかと聞いてくる。
知識がそれに知っていることを述べると、僕はザワリと胸騒ぎがした。

そんな僕の僅かな表情の変化に目敏く気付いた知識がそっと側に寄ってくる。

「…クロロ達はここで待ってて、若しかしたら帰ってくるかもしんないから
 シャルは一緒に来て、嫌な予感がする」

僕は知識を連れてアジトを出た。
時刻は夕方の7時。

既に日も沈んで周囲は真っ暗である。

「ウキヨ兄ぃ、頼りあるの?」

「ちょっとばかり魔術に頼るよ、流石にこの暗さじゃ人にも聞けないからね」

僕はそう言って知識の頭を撫でた。

「nos delta volfa im loadl siai」

唱え終わると指先が少しだけ淡い赤に発光し、収まると同時に僕の視界にだけ赤い矢印が出現する。

「ウキヨ兄ぃ今のは?」

「ケホっ…
 道案内の魔術、マチはこの先らしい」

「ウキヨ兄ぃってかなりなんでもありだよね
 ていうか大丈夫?」

「うん、ダイジョーブ」

そんなことを話しつつ足は駆けさせる。
矢印が濃く大きくなってきた。

「そこの角の向こうだ」













角の先の暗がりには数人の男が集まっていた。

「ホンットに、どうしてこの辺りはこんなに治安がわるいのかねぇ…
 腕が鳴るよ、どこまでここいらをルール遵守の地区に出来るかね?」

僕がシニカルに笑うと男達が勢い良く振り返る。

「おぅなんだあんちゃん」
「ガキは引っ込んで…」
「おい待て、こいつこのガキ共の肩…」

僕は男達の奥に留められているマチと後ろを追い掛けてきた知識を確認すると、周囲に張り巡らせた物を右腕を高く掲げて一点に集約する。

ひうん ひうん と空気を裂く独特の音が広がり、刹那男達の片腕が勢いよく纏められて高く引き上げられる。

「ぅおわぁあっ!?」
「何だこりゃ、クソ、取れねぇ!」

関節を固定されて頭上でジタバタと足掻く男達をほっぽって、僕はスタスタと奥で蹲ったマチに近付いた。

「…ウキヨ」

顔を上げたマチの瞳は潤んでいた。

「えーっと、そのついウッカリ仕事に没頭しててね…
 …………ごめん、護衛失格だなこりゃ」

「いや、アンタを信頼してなかったし
 油断してたアタシが悪いんだよ…」

「とりあえず、帰ろうか」

そう言ってマチちゃんをレン兄ぃがやったみたいに抱き上げる。

「って、ウキヨ兄ぃそれお姫様だっこ…」

「これ以外の抱き上げ方、俵担ぎ知らないんだよね…」

「何その偏った知識!?」

僕が苦笑したりなんかしながら、アジトに戻るとクロロ達が慌てて駆け寄ってきた。

マチちゃんが少し照れた顔でありがとうウキヨ≠ネんて言うものだから、微笑ましくてやっぱりニマニマしちゃうのは不可抗力。

クロロ達がマチちゃんを囲んで心配していた≠セのと盛り上がっている間に、僕もそろそろ知識に意識してもらうべく行動に移した。

「知識、今から少し零崎としてさっきの所に戻ろうか?」








今度はお姫様抱っこではなく俵担ぎで知識を抱えて、さっきの場所に戻った。

頭上では今だに男達が吊り下げられている。
関節を外れないように固定して纏めてあるだけなので、意識も飛ばせずにただもがき続けていたようだ。

「ちょっとウキヨ兄ぃ、態々戻ってきて何の用事なのさ」

「うん、あの日知識の殺人衝動を僕が魔術で抑えたじゃん?」

「…………?うんまぁ」

「ずっと僕が抑えてる訳にも行かないデショ?」

少しずつ、自分で抑えるようにしなきゃいけない。

僕は指先で知識の眉間をトンと突いた。
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