冥王星にさよなら

□それしか出来ない
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シンドバッド王。
その本人が目の前にいるこの事態に、私の思考は停止してしまった。
すると、あれよあれよとことは運び、この部屋にいる人の自己紹介が始まった。
側近のジャーファルさん、長身で朱髪のマスルールさん、黄色髪の少年がアリババくん、朱髪の少女がモルジアナちゃん。そして、青髪のあの少年はアラジンくんと云うらしい。
特に悩んでいた、私が何者であるかと云う話しも、身なりから「旅人」と解釈されているようであった。本当に一安心した。
ベッドで横になりながら、話を聞いていると私はどうやらとても感謝されているらしい。アラジンくんを救った、と云う理由で。

「救ったと言っても、何も出来ませんでしたが。シンドバッド様が、来なかったらどうなっていたことか」

私の意識が途切れた時に来た人物がシンドバッド王だと聞き、また土下座しそうになった。感謝なら、シンドバッド王にするべきだと思っているとアラジンくんが私に語りかけた。

「よのはお姉さん、一つ聞いていいかい」

「どうぞ」

「お姉さんがボクの上に倒れた時、何故謝ったんだい」

出来れば言いたくなかったが、上手い嘘が見つからなかった。

「盾になることしか、出来なくてごめんねって謝ったの」

「たて?」

「そう。私がアラジンくんの上に覆い被されば、もし槍が降って来ても大丈夫でしょ」

誰よりも悲しい顔をしたのが、シンドバッド王だったなんて私は知るよしもなかった。



**



王は告げる。
傷が癒えるまでいてよい、と。それは、有難いがとても申し訳ない。何も返せるモノを持っていないのだから。断ろうと、せめて明日まではいさせて欲しいと口を開き掛けた瞬間、アラジンくんと目が合った。

「ゆっくり、休んでいっておくれよ。お姉さんとたくさん、お話したいんだ」

「っ、」

満面の笑みで、そんなことを言われたら断るに断れないじゃないか。アラジンくんの笑顔に、私は敵いはしなかった。

「ありがとうございます。早く良くなるよう、努力致します」

シンドバッド王に向かってそう告げれば、よろしいと頷かれた。
私は、横になっている身体を起き上がらせベッドの上で正座をした。ゆっくり息を吸い吐いて、精神統一させ口を開いた。

「シンドバッド様。私には権力も金も知識も武道も何一つ、人より秀でるものがなく貴方様にこの恩義をお返し出来るものは何一つ持ち合わせておりません。この身、一つしか御座いません。ですので、貴方様が私のような者でも必要と言って下さる時、貴方様の為に全力で尽くさせて頂きます」

目を逸らさず、全てを言い終え深く頭を下げる。再び顔を上げ、またシンドバッド王と視線を合わせた。

「君は、アラジンを助けじゃないか」

「当然のことをしたまでです」

シンドバッド王は、困った様に笑った。

「よのは、君はもっと楽に生きた方がいい」

それが出来たら、苦労はしませんよ。
言い返すことも出来ず、曖昧に笑っておいた。



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