冥王星にさよなら
□おにいさんと一緒
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傷の手当ては、毎回朝昼晩と行われる。朝昼は、この城のメイドさんが。晩は、ジャーファルさんがしてくれる。
最初は、何て大袈裟なと思ったが手の傷は私が思っているよりも重症だと云うことだった。何より、晩に王の側近であるジャーファルさんが直々に手当てすることに驚いたがシンドバッド王へ報告の為だと気付き変に身構える必要もなくなった。
「手は痛みますか」
「はい。少し痛みますが、動かさなければ何ともありません」
「それはよかったです」
ジャーファルさんは、優しく微笑み私の手の手当てを続けた。手付きが、優しい。
それがとても心地よく、眠気を誘った。
「もう少しで終わりですから、頑張って下さい」
舟を漕ぎ出した私にジャーファルさんがそう告げた。
身体が疲労している所為か、一日の大半を睡眠に費やしていた。今日も十分寝たはずなのになぁと思いながら、手当てが終わるのを待った。
「はい。出来ましたよ」
ジャーファルさんが包帯を切りしっかり結んぶ。
「ありがとうございます」
「いいえ。また明日も来ますからね」
そう言われると、何故だか嬉しく何とも言えない気持ちになった。
心地良い。ここの優しさがとても心地良く、慣れたくないなと思ってしまう。慣れてしまったら、もう一人で旅をすることなんて出来やしない。
早く傷を治さなくては、そう強く心に誓った。
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ジャーファルさんが手当てをしながら喋り出した。
「そんなに、緊張しなくてもいいんですよ」
「すみません。でも、難しいです」
王の側近に対し、緊張するなと云う方が間違っているような気がする。それに砕けた態度は、失礼なんじゃと考えているとクスリと笑う声が聞こえた。
「すいません。貴女があまりに真剣に考えているもので」
つまり、真剣に考えていた顔がアホ面だったと。ジャーファルさん、酷いです。
「決して、悪い意味で言ったんじゃないんですよ。ただ、貴女はわかり易くて」
「よく、言われます」
私は、感情が顔に出やすい。よく言えば、素直。悪く言えば、単純。気をつけてはいるが中々、上手く感情を隠せない。
「いけないとは思っているんですが、」
「貴女らしくて、私はいいと思いますが。そう云う、ありのままで私や王に接して下さい」
百歩譲って、ジャーファルさんに砕けた態度をとるとしても、シンドバッド王には一生無理な気がした。砕けた態度をとった瞬間、首を狩られても文句は言えない。
「…頑張ります」
「貴女のとる行動は確かに正しいですが、もっと楽にしても誰も文句は言いませんよ」
ジャーファルさんは、優しくそう告げ私の手当てを続行した。
「ジャーファルさん」
「何ですか」
「私とお話、して頂けませんか」
「いいですよ」
どうしよう。今日は嬉しくて、寝れそうにない。